つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

総合3.5以上(オススメの名作)

薫の秘話

カルト系作品の話になれば、必ず取り上げられる作品の一つが本作「薫の秘話」である。 そもそも、ハゲ、デブ、チビ、マザコンに、ホモでニートの主人公なんて、マンガ史上二度と登場しないだろう。 そんなマイノリティー主人公が、社会を口先三寸で笑い飛ば…

天地明察

原作者「冲方丁」の有名時代小説をコミカライズした作品。 日本の暦を作成した男「渋川春海」の生涯を描いた物語で、江戸時代の生活を作画担当の「槇えびし」が非常に魅力的に画力で描いている。 城の碁打ちとして退屈な日々を過ごす主人公が、算術を競い合…

AQUA / ARIA

作者「天野こずえ」を一躍有名にした代表作。水の惑星「AQUA」の街を案内する、水先案内人=ウンディーネの主人公を描いたファンタジー作品。 萌え系の画風やキャラクターの作品が苦手なのだが、本作の持つ独特の世界観と、ゆったりとした物語は確かに高いオ…

描かないマンガ家

初期の頃しか連載を読んでいなかったので、全7冊通しで読んでみたら、恐れ入った。 ギャグ漫画の「みたむらくん」のイメージしかなかった作者「えりちん」だが、こんなに面白いストーリー漫画を書けるとは。 口先ばかりで、何があっても絶対にマンガを描かな…

不安の立像

あとがきには、あまり怖くない作品を集めた、と書かれているが正直、「諸星大二郎」作品で怖くないものはあまりない。 特に、人間の得体のしれない感情を、メタ化して作品に落とす業がすさまじく、本作収録の「不安の立像」「子供の遊び」辺りが白眉である。…

こどもの体温/彼は花園で夢を見る

珠玉の短編である。 「よしながふみ」が一流処に名を連ねてから随分たつが、この文庫版に収録されている作品を描いていたころは、まだまだマイナー作家だった。 しかし、その時代から、この作者は変わらず、面白い作品を描き続けている。これは、実にスゴイ…

Y氏の隣人

作者「吉田ひろゆき」が現在も作品を発表しているか微妙なところだが、この作品のインパクトは強かった。一話完結のショートストーリーで、人間の欲望やエゴに対して、それを叶えてくれる不思議な道具を渡す幸福の伝道師ザビエール。無論、その道具が必ずし…

怪盗ルパン伝 アバンチュリエ

作者「森田崇」の代表作となるモーリス・ルブランの名作のコミカライズ。 イブニングの連載中止からヒーローズコミックスで無事復活した本作だが、名作「奇厳城」編を収録できた意義は大きかった。ルパンという非常に魅力的なキャラクターをマンガの世界で楽…

無限の住人

作者「沙村広明」の代表作にして、長年、アフタヌーンを支えていた時代活劇。 家族を惨殺された少女「凛」と、彼女の復讐のために雇われた不死の男「万次」の長い復讐の旅路。 とはいえ20年に渡る、あまりの超長期連載に、中だるみ感がなかったとは言えな…

町でうわさの天狗の子

作者「岩本ナオ」の出世作となった天狗の子も無事完結。 「雨無村役場産業課観光係」の牧歌的で少しリアルな世界観も良かったが、本作は、日常の高校生活の中に「天狗」という異世界を自然に混ぜ込んだ、混沌ファンタジー。 天狗と人間のハーフに産まれなが…

アバンチュリエ

日本でルパンのマンガを読むのであれば本作をオススメしたい。そんな風に感じる傑作である。 もちろん、原作のルパンの面白さがあるからこその本作の出来栄えなのだが、それにしても、トリックの舞台となる建物や、いかにもナルシストでアーティスティックな…

桜の園

「河よりも長くゆるやかに」が少しひねりを加えた変化球だとすれば、これこそが、作者「吉田秋生」の真骨頂ではないだろうか。女子高生活の華やかさや明るさだけを描くお気楽な作品が多い昨今、昔の少女漫画は、真剣にこのテーマに取り組んでいたな、と思わ…

ナガサレール イエタテール

近年、最も注目に値する新人マンガ家を問われれば、本作の作者「ニコ・ニコルソン」と答えたい。 まだ「ストーリー漫画」を目指すのか「エッセイ系マンガ」でいくのかはわからないが、エッセイ系では十分に一流の仲間入りができるレベルだ。 本作は、東北大…

いつもポケットにショパン

ベテラン「くらもちふさこ」による往年の名作であり、主人公「麻子」と幼馴染の「季晋」のピアノと青春を描いた本作。長期間にわたって読者から評価される作品が必ず持ち合わせているものとして主人公の魅力というものがある。不器用で母親との関係が上手く…

ママゴト

やはり「松田洋子」作品は良い。人間の持つ泥臭さの表現の幅が、並のマンガ家と一線を画している。 風俗店時代に授かった最愛の子供を自分の不注意で死なせてしまった映子。 その事件以降、子供と向き合えない人生を送っていた彼女が、友人の子供を預からな…

モリのアサガオ

マンガ文化の幅広さを感じさせる作品は多々あるわけだが、マンガが大人にとっても娯楽たりえると感じさせてくれる極めて深い作品である。タイトルの由来は、死刑囚を収監する刑務所=暗い森と、朝に突然呼び出され昼前には処刑される死刑囚=アサガオの二つ…

包丁人味平

あまりに懐かしい本作を古本屋で発見して、久しぶりに読了。やはり、この時代は「牛次郎」と「ビッグ錠」コンビの黄金時代だ。 70年代少年マンガの魅力のほとんどが、この辺りの作品に詰まっていると断言したい。 まだマンガにリアリティが全く求められてい…

A-BOUT!

A-BOUT!に関して書くとすれば、マガジン編集部が本当に勿体ないことをした、という一言に尽きる。 本作は、連載当初こそ勢いだけのバカヤンキーマンガだと思われていたが、そのバカさ加減こそ、喧嘩ヤンキーマンガの命だという事がわかる大傑作だった。特に…

リトル・フォレスト

東北地方のとある村の中の、小さな集落「小森」そこで暮らす主人公「いち子」 大自然の中で描かれる四季の暮らしと、美味しそうな食生活。 全てが便利ではないと頭では分かっていても、都会の人が憧れてしまう田舎暮らしを、自然マンガの天才「五十嵐大介」…

北斗の拳

少年ジャンプの文化が良いほうにも悪いほうにも混ざり合った、「武論尊」と「原哲夫」コンビの稀有な傑作。核戦争後の世紀末に、無残に敵を殺す北斗神拳という今見返しても通用する斬新な設定と、ジャンプ王道のバトル展開と爽快感。 ここで終われば不朽の名…

B.B.joker

圧倒的に斬新でくだらないダジャレを、何とも可愛らしい絵柄で展開したある意味伝説的な4コマ作品。最初読んだ時、少女マンガ出身のギャグ4コマで、こんなスゴイ才能があり得るのかと心底驚かされた作者「にざかな」だが、原作のどうしようもないネタを書く…

座敷女

その独特の絵柄と作風で、異端のポジションにいる作者「望月峯太郎」そんな氏の作品群の中でも、異彩を放っているのが本作だろう。 夜中に部屋を訪ねるドアのノックの音がして、ドアをあけると、紙袋を持った大女が立っていて。。。 それまで多くの作品がわ…

マドモアゼル モーツァルト

もはや書籍版は新品では購入できないかもしれない。ただ、隠れた名作だ。 天才音楽家モーツァルトが、実は女性だったという大胆な設定を舞台に物語は展開するが、モーツァルトの奔放な精神、作曲群と、サリエリとの愛憎ともいえる関係性がこの設定故にリアル…

脂肪という名の服を着て 完全版

これこそ、「安野モヨコ」と呼ぶべき「安野モヨコにしか描けない作品。太っていて気が弱いOL「花沢のこ」は、食べている間だけ、シビアな現実を忘れられる日々。それでも、徐々に日常は壊れ始め、ついに彼女はやせる事を決意する。やせられれば、やせさえす…

アタックNo.1

レビュー作品もついに500作品。せっかくなので少しレジェンド的作品をという事で、「浦野千賀子」が一時代を築いたアタックNo.1を選んでみる事にした。本ブログでは70年代作品にカテゴリーしているが、連載開始は68年で70年には連載終了という事で、60年代と…

strawberry shortcakes

「魚喃キリコ」の代表作と呼ばれる本作だが、個人的にもこの作品を推したい。女性の持つ内面世界を、4人の登場人物を通して、これでもかというほど繊細に美しく表現した本作。基本、ショートストーリーの連作ではあるが、少しずつ時間軸が動く中で、変わって…

サルチネス

久しぶりに「古谷実」に泣かされた。 一世を風靡した「稲中」以来、創作を模索してきた作者。 「ヒミヅ」以降は、ひたすら人生からの問いかけを哲学する事が課題となり、エンターテイメントとしてのマンガは、置き去りになっている感もあった。 しかし、本作…

僕たちがやりました

ここ最近、連載マンガの中で最も続きが気になった作品。それが本作「僕たちがやりました」である。高校生のバカバカしい日常を描いたギャグ作品かと思わせる序盤と、誤って学校爆破事件を引き起こしてしまってからの、古谷実ばりの鬱展開のギャップで、圧倒…

魔法使いの娘ニ非ズ

十数年前に始まった、天才「那州雪絵」の復活を感じさせた魔法使いの娘シリーズも、ついに最終7巻で完結してしまった。この十数年、オカルト系作品としては、最高峰の面白さを保ちながら、毎年1冊程度の単行本を楽しませて頂いたものである。そんな作品の続…

異端の経歴 ~ カリフォルニア物語

異端の才能と呼ぶに相応しい「吉田秋生」の存在を世に知らしめたデビュー作。カリフォルニアに住む高校生という設定自体から既に異端の作品ではあったが、当時、この手の世界を描かせたら右に出るものはいなかった「萩尾望都」の影響は強く受けており、序盤…