作者最後の『ドカベン』シリーズである本作を今更ながら読んで、改めて作者「水島新司」が野球漫画の帝王だという事を思い知らされた気がする。
通常マンガ界で「〇〇漫画の帝王」とか主張してしまったら一大論争が始まる事は確実で、ラブコメだろうとスポーツだろうといくらでも推し戦争が始まるだろう。
最近SNSを賑わせている矢口孝雄でさえ釣りオンリーではなく「マタギ」といった自然世界の描写の他作品を描いており、それは普通の事なのである。
しかし、水島新司に関してはもうほぼ全ての作品が「野球」なのだ。
Wikiなどの作品一覧を見ても、例外はほぼ1つぐらいしか見当たらないのではないだろうか。
加えて作者自身の漫画家としてのキャリアは決して短いものではない。というか漫画界平均に比べて圧倒的に長い。
本作の巻末作者コメントで語られている通り、昭和47年にドカベンがスタートしてから最終章の本作ドリームトーナメント編が完結するまで46年間なのだ。その間、ドカベンシリーズだけで出版された単行本は、なんと205冊である。以下内訳。
ドカベン・・・48冊
大甲子園・・・26冊
ドカベン プロ野球編・・・52冊
ドカベン スーパースターズ編・・・45冊
本作 ドリームトーナメント編・・・34冊
そして、それ以外にも圧倒的に多くの「野球漫画」を輩出してきた。
一球さん、男どアホウ甲子園、おはようKジロー、球道くん、極道くん、虹を呼ぶ男、光の小次郎、野球狂の詩…
名前が知られているメジャー作品だけでもこの量であり、マイナー作も含めたら数えきれない作品量なのである。全部野球。
そして、その多くの作品から主人公を集めてきて、自分の漫画の中でトーナメント戦を開催する。もはや作者「水島新司」自身による壮大な同人誌と言っても過言ではない。
商業出版されている作品を同人誌呼ばわりする事に蔑む意図はなく、本当に純粋に凄いとしか言えないのだ。作者冥利につきる集大成といえるだろう。
断言するが、恐らくこれほど大規模な自作のキャラをクロスオーバーさせることができる作者は後にも先にもいないのではないだろうか。故に、遠慮なく「野球漫画の帝王」と呼ばせていただいたわけだ。
さて、そんな肝心の本作の書評だが正直難しい。
というのもブログ主自身もドカベンはプロ野球編の途中ぐらいまでで離脱してしまっている為だ。また、数々のその他の野球漫画群に関しても数作しか読んでいない。
そのため、知らないキャラクターの活躍を読んでも十分に盛り上がれないのだ。
しかし、完全に本作を楽しむためには先ほど挙げた作品群となる数百冊以上を全部読むぐらいの気合が必要であり、あまりにハードルが高いのである。
ただ、本当に久しぶりに『ドカベン』を読んでみて、改めて実感したことがある。
作者自身も本作の中の「井上雄彦」との巻末対談で語っている通り、やはりドカベンの主役は男・岩鬼正美なのである。正確には物語を動かすのは常にこの男なのだ。
悪球は打ててもど真ん中が打てない。
この圧倒的なキャラクター性と意外性は尋常ではない。
そして、その意外性とは真逆に質実剛健に絶対的な強打者として君臨するドカベン「山田太郎」。この二人のコンビの安定感はやはり絶対的だった。
加えて作者自身もその事がわかっていたのだろう、この長いドカベンシリーズのラストの何と美しい事だろうか。
このラストに否定的な感想を綴った熱狂的なドカベンファンのブログも読んだが、私は非常に浅いドカベンファンだったので、このラストで良かった。
というか、このラストが良かった。
大甲子園の巻末作者コメントで書かれていた「岩鬼」と「山田」への感謝そのものという印象を受けたのだ。46年間という長い歴史の最後が懐古で締めくくられるのも一興ではないだろうか。
というわけで最後にこのブログの流儀なので一応評点はつけておくが、これは公正な評点ではない。作者の大ファンが読めば間違いなく5点満点だろうし、ドカベンすら未読の初心者が読めば点数がつくのかもわからない。
実際、私も大甲子園の武蔵坊の登場シーンなどは懐かしくて感動したわけで、あまりに過去に読んだことがあるキャラと、知らないキャラの感情のギャップが大きすぎるのである。それ故に評価不能というのが本作の正しい評価だろう。
これはひたすら野球漫画を描いていた作者の往年のファンが、最後に楽しむべきドリームマンガなのである。
読後メモ:水島野球漫画の集大成
- 好き:歴代作品のキャラクターが集結する壮大なクロスオーバーと、岩鬼・山田を軸にしたシリーズ終幕の美しさ
- 弱点:過去作の知識と思い入れによって面白さが大きく変わり、単独作品として評価しにくい
- おすすめ:ドカベンをはじめ水島新司の野球漫画を長年読んできたファンに
- 評価:3.90 / 5
レビュー執筆:mangadake(当ブログ管理人)

