総合評価・・・3.86
あまりに面白かったので2か月ぶりにブログ更新。
日常系作品として近年の最高傑作をあげろと言われれば即答で「それでも町は廻っている」と答えるぐらいの石黒正数ファンなわけだが、そんな名作に多大な影響を与えたと言われているのが本作「菫画報」だという事で以前から読んでみたかったわけだが、今回読んでみて沼にハマってしまった。
これはさすがに面白すぎる。
Wiki様によると石黒正数は作者の小原槇司に「俺の『菫画報』を描かせてくれ!」と伝えたぐらい影響を受けた作品らしいのだが、読んでみると確かにこの空気感は「それ町」である。
なによりも本作の最大の魅力である主人公「星乃スミレ」のキャラの強さが凄い。
ストーリー自体は新聞部に所属する高校生の主人公が他愛ない日常を過ごすという、ただそれだけの作品なわけだが、どの話もセンスの塊でどこを切っても面白いのである。
エピソードとしては学園生活以外でも紙芝居を手伝ってみたり駄菓子屋を手伝ってみたりとノスタルジックな舞台も出てくるわけだが、どこに登場しても主人公の強さで押し切ってしまうのである。
このあたり嵐山歩鳥の強さを彷彿とさせるものがあり、それ町の連載終了以降、あの空気間の作品に出合えなかったブログ主としては感無量なのである。
また独特のセリフ回しも心地よく、読んでいて楽しくなる会話劇についついハマって抜け出せなくなってしまうのだ。
そんな学園コメディ作品かと思えば、不意に挟まれる少し不思議な世界の描写もなんとも魅力的で、読者はすっかり菫画報の世界観に取り込まれてしまうわけなのだ。
ストーリーラインが非日常なシナリオに展開していく事はないし、ある意味同じような日々と登場キャラの繰り返しなのだが、どこかで非日常と融合しており、何か起こるのかなと思って読まされてしまうこの技量は素晴らしいの一言に尽きる。
そんな本作唯一の欠点は、
たった4冊しか単行本がないことなのだ。
どうして、この作品が4冊しか出なかったのだろうか。最終4巻に掲載された作者あとがきを見る限りは大団円というよりは打ち切り的な印象を受けるコメントであり、何より最終話付近はかなり取っ散らかってしまっている終わり方である。
その点をのぞけば、あまりに偉大。
確実に後の世の創作に影響を残したと思える名作だった。
やはりアフタヌーンは神。
明らかに現代でも通用する面白さがある、というよりむしろ現代ではさらに評価が高まる作品だと思われるので、続きが読みたいものである。