カルト系作品の話になれば、
必ず取り上げられる作品の一つが本作「薫の秘話」である。
そもそも、ハゲ、デブ、チビ、マザコンに、
ホモでニートの主人公なんて、
マンガ史上二度と登場しないだろう。
そんなマイノリティー主人公が、
社会を口先三寸で笑い飛ばそうとするが、
相手にされずに、母親だけが、
彼の暮らしを支える日々。
そんな超ブラックコメディ作品だ。
完全復刻とうたっているが
本作は連載作品の全てが収録されている
わけではなく、セレクション的に選んだ作品を、
連載時の修正前バージョンで復刻したもの。
本当に全話読みたい場合は、
別途全2冊の単行本を買う必要がある。
とはいえ、ちばてつや賞の大賞を受賞した
「お散歩」が収録されているので、
こちらを買うのも一興である。
これは一読に値する面白さだった。
まだ世界への強烈な憤り満載だった時代の
「松田洋子」作品なので、近年の優しさは一切なし。
しかし、コメディ仕立てになっているが、
人間観察力は相変わらずで、
社会の気持ち悪さを描くことに見事に成功している。
流石だ。