総合評価・・・3.48
あまり意識して書いたわけではないのだが、当ブログで良く閲覧されている記事が田辺イエロウ氏の「結界師」である。
物語自体が大きく変遷しながら展開する長編作品なので、じっくりと腰を据えて読むのがお勧めな和風ファンタジーの大傑作なわけだが、なかでも結界師といえばやはり「志々尾限」なのである。
このキャラクターと良守の絡みが結界師前半の最大の見せ場であり、その後の火黒との決着まで含めて多くのファンが魅了された展開だったと言えよう。
で、BIRDMENの記事なのになぜ結界師の話を書いているかというと、本作を既に読まれた方はお分かりだと思うが、どう考えても、英ちゃんと鷹山のコミュニケーションは、志々尾限と墨村良守の二人の関係性そのものなのである。
前作では不幸にも描かれなかった二人の関係性の続き、それを見せてやるぞと言わんばかりの序盤の展開。
奇妙な事件に巻き込まれて鳥人間になりながらも日常を取り戻そうと奔走する烏丸英司と、徐々に人間を超越していく鷹山崇との関係性。
控えめに言って最高である。
特にこの作者は物語を暗転させるときのコマが神がかっていて、このシーンは単行本で読んでいて震えがきたものだ。
だから、今度こそ大いに期待してしまったのである。
これは運命に巻き込まれた5人の主人公の人生を、鳥部という舞台で描いた青春ジュブナイルファンタジーなんだ、と。
・・・まぁ結論から書くとまた翻弄されたわけだ。
結界師の時と全く同じ展開である。
8巻に始まるEVE達の暗躍を皮切りに、瞬く間に物語のスケールが世界展開となって、はじまりの7人を探す物語になってしまった。
この強引な世界観の転換。そして、青春ジュブナイルファンタジーを期待して読んでいる読者を置いてけぼりにする感。
田辺イエロウここにあり、といった感じである。
ただ、前作結界師の時に比べて、恐らく作品としての尺を十分にもらえなかった影響なのか、今回の作品構成は読みづらさが目立つ。
以前の巻に出てきたキャラクターや伏線を思い出すために作品を読み返す事もしばしばだった。
最終的に16巻全てを通して読み通すと、最終回までに向けてあらすじとして何かが大きく破綻しているわけではないし、面白くないわけではない。
ただ、なんというか残念なのである。
それぐらい、この作者はやはり青春群像劇が抜群に上手い。
何より、最初の5人のバードメンはこれ以上ないほど良い味を出していたのである。それを捨て去って後半から出てきた世界編のキャラクター群は、残念ながら序盤の5人ほどの魅力を感じられなかった。
次こそ、次こそはストレートに少年の友情を丁寧に最後まで描き切った物語を読んでみたいものである。
結界師の過去記事はこちら