つれづれマンガ日記 改

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数少ない編集マンガの傑作 ~ 重版出来!

総合評価・・・4.00

 

重版出来!」がついに2023年に完結した。
第1巻の発売が2013年ということで10年間で20冊、満を持しての完結である。

松田奈緒子」作品との付き合いは長く、手元にある「レタスバーガープリーズ. OK, OK!」の1巻の発売が2001年となっていた。そのあとがきに書かれていたが、デビューして4年目にしての作者初の単行本だったようなので1996年か1997年頃のデビューという事になるようだ。


デビュー作のレタスバーガーは会心の出来栄えで、当時今よりもずっと女性マンガの地位が低かった時代に、こんなにも面白いマンガが連載されているのか、と唸らされた事をよく覚えている。

その後、ずっと作者の作品を追っていた。

どれも面白かったが、強すぎるオリジナリティはなかなか万人受けせず、なかなか大きなヒット作に恵まれることはなかった。

そんな作者の初の単行本から苦節約10年、ついに産まれたのがこの「重版出来!」だったわけである。

正直、第1話で主人公を見た時に、ついに松田作品が売れる日が来たかもしれない、という予感がした。それぐらいこのキャラクターは素直で懐が深い魅力的なキャラだったのだ。今までのクセの強すぎる松田作品の主人公にはない愛嬌があった。

編集者という、前に出すぎてはいけず、しかも泥臭い役回りで、それでも主人公を演じなければいけない、という難しい舞台にこれ以上ないくらい、この「黒沢心」というキャラクターはマッチしていたのだ。

そして、「中田伯」の登場。これでもう完全に確信した。本作は売れるな、と。
その後は皆さまご存じの通りである。瞬く間に人気作品への階段を駆け上がっていくことになったわけだ。

実際多くの読者を魅了したのはこの「中田伯」の物語だったわけで、途中、様々な出版業界の悩みやテーマを挟みながらも、本筋のストーリーラインは中田の成長を描いており、ついに最終20巻でその人間としての成長が結実するのである。

最後まで黒沢心は名脇役であり、良き主人公であった。

通常であれば主人公以外が主役であったり、読者が読みたい大筋の話以外が色々展開するのは構成が悪い作品という事になるわけだが、本作は出版業界を背負うレベルにまで成長してしまったので、大筋以外の現代の編集にまつわる諸問題に多くのページを割かれた点はやむを得なかっただろう。


それでも最後は、キッチリこの長編を締めてくれた作者の腕前に感謝したい。これが読みたかった!という読者の期待に応える最終巻だった。

2000年代を代表する編集マンガの傑作として、まだ未読の方がいれば是非オススメしたい。

最後に感慨深いので作者の自画像を2つ張っておく。
実るほど頭を垂れる稲穂かな

作者あとがきより(レタスバーガー1巻と重版出来20巻より引用)

 



 


レタスバーガーの記事はこっち

 

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