総合評価・・・3.46
アメコミやアート的といったレビューが並ぶ本作だが、作品自体はそこまで大味の海外型作品ではなく、しっかり日本のファンタジーマンガである。ただし、非常に評価が難しい作品。
特に画力の面の評価が難しい。
とにもかくにも線の太さと濃さが圧倒的で、2巻の安彦良和との対談で腱鞘炎に気を付けるように言われているのも納得の濃さであり、まさにハイカロリーマンガである。
ただ、その描写の濃さがそのまま物語の魅力につながっているかというと、むしろ読みづらく感じる部分もあり、絵にかけている労力の分だけマンガが面白くなっているかというと悩ましい。
しかし、キャラクターは抜群に良い。特に主人公のワニのアレックス警部を筆頭に、少女であり熟女でもあるネクロ、警察の面々も人間のピートやゴリラ獣人のウォルター等、キャラクター描写も絵の表現も抜群に巧く、読んでいて心地よい。
特に女性キャラのエロさと可愛らしさの描写は抜群で、現在連載中の「ZINGNIZE(ジンナイズ)」では、その点にさらに磨きがかかっている。
作者「わらいなく」が、マンガ賞の龍神賞を受賞した際の選考委員が故吾妻ひでお氏だったのだが、その講評において、めったに女性キャラを褒めない吾妻ひでおに女性キャラを褒められているので、やはり女性キャラクターで一世を風靡した人物には見える未来があったのだろう。
残念なのが構成や設定部分だろうか。特に「獣人」という設定が絵的な意味で本作を非常に面白くしているのに対して、マンガとしてはそこまで役立つギミックになっておらず、むしろ最終盤で物語を少し脱線させるような形でしか風呂敷を畳めなかった点がもったいない。また、物語構成もなんとなく二転三転してしまい、絵の表現のわかりづらさと相まって、ストレートに13冊物語に入り込める作りになっていない。
この点、物語構成と設定がもっと磨かれていれば誰にでもお勧めできる名作としてさらに高く評価できただろう。
ただ、作品の知名度に対して明らかに面白い事は間違いないので、試し読みしてみて絵の方向性が嫌いでなければ是非一読をおススメしたい作品である。