総合評価・・・4.00
学園ドタバタコメディ+恋愛、みたいなジャンルが最も好きなわけだが、個人的にその源流となっている作品が少年マンガなら「うる星やつら」であり、少女マンガだと本作「ここはグリーン・ウッド」なのだと思う。
少女マンガも面白いな、と最初に思わせたのは「伊賀野カバ丸」だったが、少女マンガのほうが面白いかも、と思わせてくれたのはこの作品だった。それぐらい個人的に思い入れの深い作品である。
初出は昭和61年の花ゆめ16号という事で、なんと昭和・・・。
正直、現在の読者がどこまでその存在を知っているかわからない本作だが、十数年ぶりに改めて再読してみて感じたのが、
現代にも全然通用するだろ、この面白さ
という事だった。ちょっと驚き。
以下、適度にネタバレしながらレビュー。
物語の舞台は男子高の寮「緑林寮」、通称グリーンウッドに集った一癖も二癖もある面々と、その群像劇。
メインキャラは4名。
グリーン・ウッド210号室の住人であり、無双のツキのなさを見せつける主人公「蓮川一也」、通称すかちゃん。
そして同じく210号室の同居人であり、男子寮なのに存在する可憐な美少女・・・
という建前で登場するLGBTを先取りしたキャラ如月瞬。
そして、お隣の211号室に君臨する、グリーン・ウッド寮長の「池田光流」と、泣く子も見捨てる血の色緑の生徒会長「手塚忍」である。
またこの4名以外にもクセの強い寮生が多数登場し、バイクを持ち込む古沢先輩や寮内でゲーセンを営業する青木と坂口のコンビ等、寮生活に無駄にあこがれを持たせてくれる。
そして、前述のメインキャラ4名を中心にした物語は、学校行事、寮生活、アイドルとの遭遇、困った恋愛や怪談等を舞台にしたドタバタコメディを展開し、その反響は少女マンガという枠におさまらず、多くの男性読者を花ゆめに引き込んだわけである。
ただし、単なるドタバタコメディだけであればここまでの人気は出なかったであろう。
本作が映像化までの絶大な人気を得るに至った要因はやはり、各キャラクターにまつわるちょっとした陰の部分の人間ドラマの影響が大きい。この辺りの暗さは以後の作品にも登場する那須雪絵の得意領域といって良いだろう。
そして、その最たるものが5巻収録の「雨やどり」である。
恐らく多くのファンが作中ベストエピソードに選ぶであろうこの短編は、それまで先輩として活躍していた最強コンビの池田光流と手塚忍の出会いを描いた物語である。
作者の柱書によれば非常に難産な作品であり「男の子は謎」との事だったが、数多くある漫画世界の青春描写として、これほど優れた短編を私は知らない。
当時、少年マンガばかり読んでいたブログ主が、繊細な心理描写を描かせたら少女マンガという世界は少年マンガとはレベルが違うという事を思い知らされた圧倒的な出来栄えだった。
全11冊(文庫は6冊)の物語の中にはファンタジーだったりSFだったり江戸物語だったりといった作者の好き放題の展開も含まれるが、それでも途中の学校行事や寮生活で登場する様々なキャラクター群は魅力的だし、何より終盤のエピソードである「愛は勝つ」や「ホリデイ」等は非常に爽やかな読後感で本作を綺麗に締めくくっている。
当時あれほど有名だった本作も、今となっては知名度が低いのかもしれない。しかし、男性も楽しめる少女漫画のはしりとして、一定層の男性読者を花ゆめに引きずり込んだ本作の功績は非常に大きい。
男女問わず、未読の方にはオススメしたい学園ジャンルの永遠の名作である。
最後に余談だがコミックス1巻収録の短編「誰か-STRANGER」は惚れ惚れするような怪奇短編の傑作であり、さすがは後に魔法使いの娘という傑作を産み出すだけの事はあるなぁ、と感心させられる名作ホラーである。
あと、面白いのに売れてない作品ナンバー1に輝いている魔法使いの娘も是非おススメしたいので貼っておく。これも超傑作。