つれづれマンガ日記 改

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ウブウブラブコメ ~ 兄友

総合評価・・・3.42



本作は作者「赤瓦もどむ」の初オリジナル連載作品で、所帯じみたヒロイン「七瀬まい」と、女の子慣れしていない兄の友達「西野荘太」のペアによる全10冊の恋愛ラブコメである。

花ゆめ45周年記念の作者インタビューでも語られている通り、超展開や強烈に悲しいエピソードなどはなく、ひたすら恋愛初心者の二人のウブな恋愛が描かれており、10巻ぐらいの作品にはありがちな友達ポジションキャラの恋愛には触れず、二人の話がメインで進展する。

またラブコメというよりはギャグコメに近い話も多い。特に、西野の妹キャラ「西野秋」はひたすらお笑い担当の役回りで、ギャグマンガのように転げ回ったりもする。

そんな作品なので読者から「本作は少女マンガなのか少年マンガなのか?」という以下のようなお手紙が届いてしまうわけだが、その要因が何かといえば作者の絵が原因だとブログ主は考える。

(9巻作者コメントより引用)


といっても「赤瓦もどむ」の絵が下手だというわけではない。むしろその逆で、とにもかくにもこの作者は絵が上手いのである。しかもかなり珍しいパターンで上手いのだ。


普通、絵の巧みな作者というのは書き込み・アングル・個性といった方向性で一目見て絵が上手い作者だなとわかるものなのだが、本作はパッと見た感じは典型的なマンガ絵なので、失礼ながら絵が武器となる作者に見えない。

しかし各単行本の表紙やカラーの色使い、キャラのモブ化や表情の変化などを追っていくと、非常に幅広い作画ができる技量の持ち主だという事がわかってくる。

徐々に磨かれる作画や色使い(10巻裏表紙より)




ただ、普通はキャラ表現の幅を広げすぎると今度は作画が安定しない=絵が下手な印象を受けるのだが、そういった印象が全くない。どんなに崩してもキャラ絵が崩壊しないのである。

結果、本作は一つの物語の中で大きく3段階のキャラ表現が同居する事になる。それが本作のエピソードごとに異なるギャグコメディ、通常ラブコメ、王道恋愛マンガの三面性なのだ。


例えばギャグコメ回の西野秋の表情などは「椿いづみ」を思わせるような崩れ方を見せるが、反面、4巻収録の初キスシーンなどは読んでいて恥ずかしくなるような王道恋愛少女マンガの雰囲気を描くのである。これはちょっと凄い技術だ。

読者の感想として少年マンガのようにも見えるし王道少女マンガにも見えるというのも、あながち間違っていないわけである。

加えてキャラの立ち方も良く、特に兄・雪紘と西野の妹・秋を含めたメインキャラ4名は非常にキャラ立ちしており、このキャラクター達が動き回ることでテンポよく物語が進んでいく構成になっている。

ただ、強いて難点をあげるとしたら、せっかく登場した「りんごちゃん」や「のぶ子」といった友人達や後輩キャラ達があまり活躍しない点は学園作品好きとしては多少物足りない点であった。ベタ甘の恋愛ラブコメ作品というわけではないので、主人公ペア以外の脇キャラにも、もっとスポットを当ててほしかった次第である。


そんなわけで、バランスよく気軽に読み終えられるタイプの作品なので学園ラブコメや古式ゆかしいおしとやかヒロインが好きな方におススメしたい。