なかなか書こうとして書けなかった「横田卓馬」氏の
作品レビューだが、そろそろ重い腰を上げて書く事にする。
作者「横田卓馬」は、ジャンプ連載前からWebで話題になった作者で、
特に「オナニーマスター黒沢」は、そのタイトルからは全く想像できないほど
高いクオリティの青春作品であり、どうして単行本を出してくれないのかと、
悲しくなるレベルのマンガである。まぁ、そのタイトルがダメなのだろうが。
そんなエッジの効いた作者が少年ジャンプという王道雑誌に、
真っ向から乗り込んできた結果創り上げた傑作が、
前作の「背すじをピン!と」であり、
ジャンプで地味な主人公、かつ、マイナー競技という、初連載としては
大成功と呼べるような作品を世に送り出したわけである。
そんな作者の2回目の連載。
選んだテーマが超メジャー級ジャンルの「サッカー」
という事で、ただの作品を描くことはないと思っていたが、
タイトル通り、既存のサッカーマンガとは一線を画した、
集団競技としてのサッカーを描こうとしたわけだから超冒険である。
そして、見事にその挑戦は頓挫し、全4冊で打ち切りになってしまったわけだ。
では、その要因は何故だったのかを考えてみると、
一つは「横田卓馬」作品の持ち味である、「暗さ」がなかった点だろう。
明るいキャラクターとテンポの良い作風に誘導されがちだが、
前作などもその根底に存在している雰囲気は、日の当たらない暗さである。
それは、競技ダンスというテーマも然り、地味な主人公という設定も然り。
ところが、超メジャージャンルの「サッカー」というテーマには、
その陰りがないのである。
加えて、主人公の「ソウシ」も、ヒロインの「ナナセ」も
割と気楽に明るいキャラクターで、決して悪くはないのだが、
サッカーマンガの主人公としては、平凡なのである。
また、本作ではダンスと違い、登場するキャラクターが多いにも関わらず、
各キャラのデザインを平凡にするという挑戦も同時に行っている。
作者はキャラクターとしてのマンガを描くのが巧いので、
しっかりと書き分けはできているのだが、登場人物が多く、かつ、
サッカーを集団競技として捉えてメンバーを描く以上、
必殺技を持ち合わせないシューダンを魅力的に描いていくのは、
非常に困難だっただろう。結果として、やはり、特徴あるメンバーが
活躍するサッカーマンガにならざるを得なかった点も、
通常のサッカーマンガに至ってしまった要因である。
ただ、3巻で収録された二人の少年時代の冒険を描いた読み切りや、
最終回等で描かれる二人の関係性は非常に良くできており、
サッカーを通しての青春や恋愛という点には魅力的な要素も多かった。
ジャンプでは、恋愛作品を描こうとすると、
物凄く綺麗な絵に走るか、エロに走るかという極端な傾向があるので、
この作風で青春要素を高めたラブコメ作品等を書いてくれても面白い気がする。
何にせよ、必ず次回作があるであろう作者なので、
またの登場を楽しみにしたい。