マニアックな作品を世に送り出し続ける作者
「山田芳裕」が、日の目を見た作品。
デカスロン=十種競技という誰も注目したことがなかった作品を描いて、
ヒット作品を産み出したのだから、その点は凄い。
また、主人公「風見万吉」のキャラクターを一貫して
バカな挑戦者のスタイルにした点も本作の雰囲気とはまり、
読みやすい展開の助けになっている。
そして、何よりその画。
陸上競技種目が持つ瞬間の迫力を、
何とか紙面の上に再現しようとした結果が、あの画である。
こればかりは読んでもらわないと伝わらないが、
「山田芳裕」のくどすぎるあの画がなければ、
この作品の魅力はないと言って良いほど、画力の影響が大きい作品である。
ラストが謎の展開を見せるのは、
山田作品のいつも通りの事なので、その点は減点だが、
この作品に関しては世界王者ダン・オブライエンとの闘いという
明確な目標があった分だけ、他作品より綺麗な完結を迎えている。
世界王者との最終1500M走の決着は、見事。
全23冊、ほとんど競技しかしていないのが逆に心地よい、
スポーツ漫画の名作である。