つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

完結の名手 ~ 暗殺教室

総合評価・・・4.02

鬼滅の刃が、あの絶大な人気を誇る中で見事に完結したので、
「ジャンプにしては珍しい」という意見が多く出ていた。

私としても同感で、マンガはやはり20冊程度が丁度良い気がする。
長くても30冊。

そして、20冊前後で完結の近年のジャンプ名作といえば、
やはりこの「暗殺教室」だろう。

完結以来再読していなかったので4年ぶりの再会となったが、
本当に面白かった。

特に第一話の完成度は圧倒的で、これだけ期待を持たせられた
第一話は、ちょっと思い当たらない。


それぐらい、「教室」と「暗殺」の組み合わせは凄まじいのである。

f:id:mangadake:20200607005853j:plain

圧倒的完成度の第1話


確かに、ネウロの頃からオリジナリティには定評のある作者「松井優征」だが、
あの作品の持つオリジナリティは、

キャラクターの奇抜さと、
独自の画力の方向性であり、

探偵ジャンルとして、鬼才のパートナーとサスペンスを体験するという
ストーリーの構成自体には、そこまでオリジナリティはない。

しかし、本作、暗殺教室は並の創作家では決してたどり着けない、
「生徒」と「教師」を「教室」の中で「暗殺」させあうという、
尋常ではない組み合わせを生み出すことに成功しており、
このオリジナリティの高さは、
マンガの歴史を紐解いても頭一つ抜けている印象だ。

また、クラス全員のキャラクターに焦点を合わせることによって、
「暗殺」という殺伐とした単語を使いながらも、
青春群像劇の側面も生み出すことに成功しており、
前作ネウロより、21冊完結まで通して読むと、ラストのカタルシス
高まるつくりになっている点も、高く評価したい点である。

勿論、中学生が世界のプロフェッショナル相手に対等に戦ったり等、
ご都合主義すぎる側面もあるが、そのあたりはジャンプが少年マンガであることを、
しっかり抑えている作者の生存戦略の賜物だろう。

この、週刊連載における生存戦略という観点は非常に重要で、
「物語として完結する」という手腕を発揮させたら
ジャンプで最も優れているのは、やはりこの作者ではないだろうか。

そんな作者の姿勢は9巻のカバー袖に記載されている。

f:id:mangadake:20200607013038j:plain

9巻カバー袖



ただ、これだけ読むと才能ある作者が好き勝手に連載できているように
読めてしまうが、そうではない事は、文庫版のネウロのあとがきで説明されている。

 

mangadake.hatenablog.jp

 



連載がどこで終わっても、読者が楽しめるように、
完結までプロットを描き切って連載する。
それが、作者のプロとしての姿勢なのだ。

終わり良ければすべて良し、ではないが、
やはりマンガは、中途半端に大風呂敷を広げて、
いつもでも交わらない交響曲のような作品を読むより、
しっかりと終わりを楽しめる作品が私は好きなのである。

先生と生徒が殺し合うという、
圧倒的なバランス感覚が求められるこの物語を、
見事に完結まで導いたその手腕に、改めて感動させられた作品だった。

f:id:mangadake:20200607011618p:plain

 

 

 

暗殺教室 コミック 全21巻完結セット (ジャンプコミックス)