総合評価・・・4.02
鬼滅の刃が、あの絶大な人気を誇る中で見事に完結したので、
「ジャンプにしては珍しい」という意見が多く出ていた。
私としても同感で、マンガはやはり20冊程度が丁度良い気がする。
長くても30冊。
そして、20冊前後で完結の近年のジャンプ名作といえば、
やはりこの「暗殺教室」だろう。
完結以来再読していなかったので4年ぶりの再会となったが、
本当に面白かった。
特に第一話の完成度は圧倒的で、これだけ期待を持たせられた
第一話は、ちょっと思い当たらない。
それぐらい、「教室」と「暗殺」の組み合わせは凄まじいのである。
確かに、ネウロの頃からオリジナリティには定評のある作者「松井優征」だが、
あの作品の持つオリジナリティは、
キャラクターの奇抜さと、
独自の画力の方向性であり、
探偵ジャンルとして、鬼才のパートナーとサスペンスを体験するという
ストーリーの構成自体には、そこまでオリジナリティはない。
しかし、本作、暗殺教室は並の創作家では決してたどり着けない、
「生徒」と「教師」を「教室」の中で「暗殺」させあうという、
尋常ではない組み合わせを生み出すことに成功しており、
このオリジナリティの高さは、
マンガの歴史を紐解いても頭一つ抜けている印象だ。
また、クラス全員のキャラクターに焦点を合わせることによって、
「暗殺」という殺伐とした単語を使いながらも、
青春群像劇の側面も生み出すことに成功しており、
前作ネウロより、21冊完結まで通して読むと、ラストのカタルシスが
高まるつくりになっている点も、高く評価したい点である。
勿論、中学生が世界のプロフェッショナル相手に対等に戦ったり等、
ご都合主義すぎる側面もあるが、そのあたりはジャンプが少年マンガであることを、
しっかり抑えている作者の生存戦略の賜物だろう。
この、週刊連載における生存戦略という観点は非常に重要で、
「物語として完結する」という手腕を発揮させたら
ジャンプで最も優れているのは、やはりこの作者ではないだろうか。
そんな作者の姿勢は9巻のカバー袖に記載されている。
ただ、これだけ読むと才能ある作者が好き勝手に連載できているように
読めてしまうが、そうではない事は、文庫版のネウロのあとがきで説明されている。
連載がどこで終わっても、読者が楽しめるように、
完結までプロットを描き切って連載する。
それが、作者のプロとしての姿勢なのだ。
終わり良ければすべて良し、ではないが、
やはりマンガは、中途半端に大風呂敷を広げて、
いつもでも交わらない交響曲のような作品を読むより、
しっかりと終わりを楽しめる作品が私は好きなのである。
先生と生徒が殺し合うという、
圧倒的なバランス感覚が求められるこの物語を、
見事に完結まで導いたその手腕に、改めて感動させられた作品だった。