つれづれマンガ日記 改

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魔人探偵脳噛ネウロ

総合評価・・・3.6

(2012年評)

ジャンプに類を見ないその作風で、歴史に名を残した本作だが、
作者「松井優征」は、近年のジャンプ史を紐解いてみても
最も恵まれたマンガ家だったのではないだろうか。


およそ、週刊少年ジャンプという過当競争な環境において、
自身の描きたい作品を望んだ期間描くというのは、
並大抵の幸運ではない。

 

大抵の作品は早期打ち切りの目にあうか、
10巻前後の完結を迎える。
もしくは昨今の連載陣に顕れるように、
30冊を越えても連載が終われない
長期化の一途を辿る展開に巻き込まれる。

短すぎる作品も悲しいが、
終わりどころを見失っている作品もまた空しいものだ。

では、どうすれば理想の長さで連載が終えられるのか。
結論から言えば、
真ん中より少し下程度のアンケート票が一定数集まることである。

本作がその特異な作風から確実に一定層のファンを掴み、
安定した連載ができたことは、作者のあとがきにおいても語られている。

また、いつ打ち切りになっても作品として完結しているように、
1、2、3、7、10、20巻あたりで終わるようにあらすじを考えていた、
と最終巻のあとがきで語られていたが、
これも大変素晴らしい心構えだった。

実際、打ち切りに備えたエピソードが人気を呼び、
アンケート票が復活するという事はよくある展開だ。
本作でも、打ち切り用に準備されていたエピソードはやはり
頭一つ面白い作品に仕上がっている。

特異な作風と、切れ目ごとの練られたエピソード。

この2つをどれだけ狙って
作られたものなかは私にはわからないが、
少なくともジャンプで自分の描きたい作品を描ききる
という結果を手にしたのだから、
戦果としては申し分ない結果だっただろう。

また、女子高生探偵ヤコと
魔人ネウロの間に恋愛的な要素を一切いれず、
友情、信頼をテーマにしていた点も、
昨今のラブコメ全盛の時代において、高く評価したい点だ。

当時、この異色の作品と「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」が
同時期に連載を始めたころには、
ジャンプも随分新しいジャンルを開拓しはじめたものだ、
と感じたものだったが、
結果としては編集者の目が正しかった。

連載で読むよりも単行本23冊を通して読むことで、
本作が一つの作品として完成していることがよくわかる。


機会があれば是非読み返して頂きたいものだ。

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