つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

変化する顔と物語 ~ 星野、目をつぶって。

総合評価・・・3.34

 

読み終わってもレビューに手を付けていない積んでる作品が多くなったので、多少振り返ってレビューという夏休みの宿題に取り組むことにする。

メイクをすると美少女に変身するヒロインの星野と、自分ではメイクできない星野を手伝うことになった美術部の小早川という不思議な組み合わせの学園ラブコメ

「ヒロインのメイクを手伝う主人公」というオリジナリティは非常に良かったのだが、いわゆる秘密を抱える主人公マンガの弱点で、隠し事を素直にさらけ出せないとキャラクターが前に進めないというジレンマに見事にはまっている点が難点だろうか。

加えて、序盤はラブコメ展開で行くのかと思いきや、中盤からは松方と加納の女同士の友情ストーリーのほうが明らかに話の中心になっており、およそラブコメ的な展開が少ない。最終章でも主人公二人の恋愛はかなり置いてけぼりであり、完全に周囲の友情や仲直りが中心になっている。

そのわりには、最終13巻には描き下ろしの追加ストーリーがあるのだが、無理やりクローズさせた感があり、何とも言えない読後感だった。


このあたり、特に少女マンガ等のベタ甘な恋愛に鍛えられた身としては、あまりに主人公カップルの放置が酷くて悲しくなる。


文化祭・体育祭・修学旅行と、これだけ学園ラブコメの王道テンプレの舞台が揃っていて、どうしてこうなった、と不思議に思っていたが最終13巻のあとがきで「恋愛に興味ない」とコメントされており、ある意味全て納得がいった。確かにこれは恋愛に興味がない人が描いたラブコメ作品である。

 

ただ、作者は「一生懸命生きること」には興味があるようで、恋愛とは別の青春群像劇は面白かったし、もはや、松方と加納の二人の物語でも良かったかもと思えるぐらい、二人の物語は面白かった。また、作画もマンガ的な意味で非常に巧いので、このレベルの画力があれば、どんなジャンルのマンガでも面白く描けるだろう。

 

最後に全13冊通して読んでみると登場キャラクターが多すぎて、物語が散漫になってしまった点も弱点だろうか。こじらせた青春の部分には熱量がこもっている分ページ数を取られているので、恐らくもう少しキャラを絞って描いても良かったのかもしれない。


というわけで本作自体の評価は散々だが、最後に持ち上げておくと、作者「永椎晃平」の現在の連載作品「スケアリー・キャンパス・カレッジ・ユニバーシティ」は非常に面白く、毎週楽しみに読んでいる。

恋愛ではなく自身が得意とするオカルト領域の描写ができており、キャラクター数も無駄に増えすぎておらず、展開も悪くない。結構、注目して読んでいるのでこのまま続いてくれると良いのだが。