つれづれマンガ日記 改

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厄介物 ~ ゴーストライター

水木しげるで育った身としては、どうしても怪奇ジャンルの漫画が大好きなのでその手の作品はすぐ手に取ってしまう。という事で本作ゴーストライターを読んでみた。

人の心を勝手に自動書記してしまう「伊勢よしの」と、ネクタイを硬化させる能力で怪奇と戦う「日々木太一」のペアが主人公となる作品で、学園生活と特殊能力バトルといったある種の王道作品である。

日常の怪奇「厄介物」に巻き込まれながら、様々な特殊能力に目覚めた生徒会のメンバーと手を組み、敵側の能力者と戦っていくという流れは確かに昨今のファンタジーや学園ジャンルではありふれすぎていたのか、全3巻という完結を迎えてしまっている。


作者「御影夏」の出身からも確実に言えることは画力は高い。そこは確実に評価できる点。

ただ、3巻打ち切り作品だったせいで、登場キャラクター数は多いのだが、どうしても物語がたたみ切れなかった部分が痛い。特に主人公サイドの生徒会メンバーとは別に登場した、警察組織側のメンバーは全くその存在と設定が十分に活かされないままに終わってしまった点は残念だった。

また「厄介物」と呼ばれる怪奇キャラクターのデザインも可愛らしくもおどろおどろしいのだが、そのあたりの存在も十分に描かれないまま終わってしまった点も悲しい。

ただ、最終話のエピソードと生徒会長の能力の秘密や、第一話から張られていた黒幕の伏線はしっかりと回収されていたので、もう少し丁寧な作品作りができる物語の尺が与えられていれば、このあたりは違った読み応えの作品になったのかもしれない。

個人的には、2巻から登場する「乾」の存在がどうにも評価できなかったので、このあたりの新キャラ投入のテコ入れというのは、やはりなかなか難しいのだろう。
また、物語やアクションを画力で表現する絵の力は十分なのだが、セリフや心理描写等のネーム部分がどうにも弱かった点が、3巻で完結してしまった最大の要因だと思われる。

作者のその後の作品を見る限りは元々活躍していたジャンルと同様に女性キャラの魅力を活かした方向性で活躍しているようなので、その手の方向性に振り切る決断は悪くなかったのかもしれない。

本作は、お色気描写はほぼない、ある意味作者が真正面からストーリージャンルに挑戦している作品なので、作者のファンの方は読んでみて損はないだろう。