つれづれマンガ日記 改

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2000年代を代表する裏社会マンガ ~ 新宿スワン

総合評価・・・3.90

 

「東京卍リベンジャーズ」が売れまくっている、作者「和久井健」のデビュー作。東卍も人気が出るにつれて、タイムスリップを繰り返して引き延ばしているようにも見えるが、本作「新宿スワン」の最後をあれだけ綺麗にまとめあげた実力を信頼して、続きを楽しみにしている最近である。

 

 

さて、この作品だが当時からヤンマガが得意としていたアウトロー世界の一つのジャンルとして、「歌舞伎町のスカウト」に目を付けたわけだが、当時は類似作品がないジャンルで非常に良かった。

 

そして作品序盤は、よくあるマイナージャンルのノウハウや知識をベースにして展開していくわけだが、最初から主人公の白鳥タツヒコや、真虎さん、幹部の関、といったキャラクター群が軽快に動き回っており魅せるものはあった。

しかしその後は、徐々に実社会のほうでスカウト禁止条例の流れが出てきており、
作品の舞台はAVスカウトや闇金問題等の時代の情勢を捉えた展開になっていく。

このまま、アウトロー業界あるあるマンガで終わってしまえばそこまでだったのだが、
ここからが作者「和久井健」の本領発揮である。


17巻から始まるホスト編からは、その後38巻まで続くことになる壮大な伏線に絡むキャラクター群が登場し始め、最終章の歌舞伎町ピカレスク編までを見事に盛り上げてくれるのである。


特に伏線の回収力が抜群で、205話で張られた伏線が、あれほど綺麗に回収されるとは、当時は全く想定していなかった。

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205話 始まりの日より引用

また圧巻は36巻の伏線で、ここからラストまでの展開は完璧である。
これぐらい面白い伏線回収は、近年お目にかからないレベルだった。

勿論、序盤はそこまで考えて連載された作品ではないので、色々と放りっぱなしになっている伏線や、そもそも最初は単なるケツモチのヤクザだった天野修善が、大物になりすぎているなど批判できる部分はあるが、それでもこの作品のマンガとしての圧倒的な面白さと構成力の巧みさは高く評価すべきだろう。

 

以上のように、結局のところスカウト禁止条例が出来てしまった事で、単なるスカウトあるあるマンガですまなくなってきた事が本作の方向性を大きく変えていったわけだが、それが結果として作者の実力を大いに見せつける展開になったのだから、人生何が起きるかわからないものである。

やはりマンガは面白い。

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