つれづれマンガ日記 改

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カラスたちの伝説 ~ WORST

総合評価・・・3.44

久しぶりにクローズを全巻一気読みしたので、その勢いでWORSTも読了。
まぁ賛否両論あるのもわかる作品だったので、以下ネタバレレビュー。





 

 


さて、シリーズを通読して痛感させられるのだが、やはりクローズは月間少年チャンピオンの伝説だったんだなぁ、という事である。全26冊を通してやっていることは単に、ヤンキーが喧嘩している、ただそれだけのマンガなのだが、その作品をもう何度読み返したかわからない。

この辺りは、単にレースを繰り返しているだけのバリバリ伝説にも似たような感想を持つのだが、単に主人公が同じ土俵で同じように活躍するだけの物語が、なぜこんなに面白いのか、と不思議になる。それぐらい、坊屋春道というキャラクターは魅力的で最高だったのだ。

で、当然続編のWORSTにも期待が高まったわけだが、こちらは正直、20巻程度のところで作品を読み続けるのをリタイアしてしまっており、何年も放置してしまっていたところを、やっと先日33巻の完結まで読み終えて本レビューを書いているという代物だった。

高橋ヒロシ」という同じ作者の同じヤンキー喧嘩マンガなのに、何がそんなに違うのか。ここのところを以下で少し言語化してみようと思う。

まず、第一にあげられるのが「リンダマンとグリコ」の魅力の違いは大きい。

前作のレビューでも書いた通り、クローズという作品の魅力を大きく底上げしている存在として「リンダマン」の影響は計り知れないものがあり、当初の登場場面から護国神社での伝説まで、リンダマンは終始一貫してクローズという作品を盛り上げてくれた。

(14巻見開きの名場面)

 

(16巻より引用)



反面、鈴蘭の魔王として君臨するグリコはキャラクターとしては首尾一貫しているのでその点は好感が持てるのだが、残念ながらWORSTの物語を高める存在だったかというと、そうではなかった。
単に自分勝手な一匹狼として、誰とも交流を深めることなく、まさに単なるマンガのキャラクターとして描かれた感が否めない。そこに、春道とリンダマンのような熱い関係性を見出すことはできなかった。


次に作品構成としての登場人物が多すぎる問題が挙げられる。これは、人気作品の宿命ともいえる問題なのだが、いわゆる作品の引き延ばしとも関係している。

WORST自体の本筋は「月島花」が番長になるまでの物語なわけだが、その過程においてあまりに、無関係な話やキャラクターが増えすぎているし、作品構成としてもキレが悪い。護国神社ならぬ天狗の森での「天地寿」との決戦を本作のクライマックスにしたらもう少し歯切れのよい作品になったと思われるが、そこから先になんだかんだで十冊以上続いてしまったのは作品構成が悪いとしか言いようがない。

 また、クローズで漫画界随一と思われるほどの喧嘩シーンを描いた作者の作品とは思えないほど、徐々に喧嘩シーンの盛り上がりが減ってくる点もいただけない。なんというか圧倒的に熱量が足りないのである。このあたりの失われた情熱の影響は大きく、27巻での花とグリコの決戦も、リンダマンと春道の伝説のタイマンとは明らかに何かが違うのである。これはもう作者の注ぎ込む熱量の違い、としか言いようがない。

 

そして、最後にこれがWORST最大の問題なのだが、主人公「月島花」の魅力が描かれていない、という点である。

 花が正統派のヤンキーでないために魅力が少ないと語られることが多いが、これは正確ではない。花はキャラクターとしては十分に魅力的に描けるバックグラウンドがありながら、それが取り上げられていないのである。花組にしても同じで、梅星一家のメンバーは登場当初は非常に魅力的であり、いくらでもここから物語を面白く事はできたと思われるのだが、そのあたりの魅力は非常に浅くしか描かれなかった。

 それはなぜかというと、作者の興味が武装戦線に移ってしまったからだ。

 主人公である花組に対しての作者の興味が薄れるのに反比例して、武装への思い入れは高まる一方であり、特に後半はほとんど武装の物語である。見開き名場面も武装のメンバーに対して使われることが多く、極めつけはビスコとのタイマンだろう。

(WORST31巻より引用)

長いシリーズの最後の最後でこの場面をもってきておいて、あの「九頭神竜男」の名前に触れておきながら、まさか最後の決着で花が登場しないとは思わなかった。

それは流石に武装推しが過ぎるというもんだろう。

九頭神竜男と坊屋春道の名前に触れてしまったからには、長いシリーズを読んできた読者の期待に応えるためにも、最後は鈴蘭が決着をつけるべきだったのではないだろうか。

もちろん、村田にせよ河内にせよ名キャラクターなので、作者の思いが武装に寄って行ってしまった点もわからなくはないのだが、全体を通して序盤から登場している花組のメンバーにとっては不憫な物語だったといえよう。


総じて、クローズほどの期待値をもって読むと確実に肩透かしを食らってしまうので、その点はあまり期待しすぎずに、ヤンキー喧嘩漫画として読むのが良い作品である。



 

 




最後に全然関係ないが市川マサのA-BOUTのレビューを張っておく。
その後の各種スピンアウトや系列のチャンピオンヤンキーマンガがクローズに及ばなかったのに対して、別出版社から登場したこの作品が、唯一、クローズの背中に最も近づいた作品だったのではと、今となっては思うのである。

 

mangadake.hatenablog.jp

 

 

 

ちなみに前作クローズのレビューはこちら。

 

mangadake.hatenablog.jp