つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

少年漫画の原罪 ~ タコピーの原罪

総合評価・・・3.24


さて、少し前に話題になったタコピーの原罪は、下巻発売と同時に読んでいたのだが、やっとブログに書く時間ができた。

内容的には完全にネタバレ含めて、かつ、そこまで高評価ではないのでファンの方はお帰りください。以下本文。

 









さて、あれだけ話題になって期待を込めて下巻を読ませていただいたわけだが、まぁ正直、肩すかしを食らった感は否めない。

というか、いい年の大人がジャンプ+の小学生漫画を本気で読むなよ、というのがある意味正しい意見。ただ、この辺り含めてやっぱりこれは少年漫画の原罪だよなぁと思わされたので、その辺りを中心に少し書いてみることにした。

まず、作品として良かった点は大きく2つだろう。
一つはタイトル。これはもう間違いない。色々読者に妄想させるし、最終的な伏線回収にも期待が高まる。私自身もこのタイトルに惹かれて購入した部分は大きかった。逆に、上下巻の主人公の涙まみれの表紙は狙いすぎてて、あまり好きではない。

そして、もう一つがやはりタコピーのキャラクター造詣だろう。これは完璧で、物語の内容とキャラクターのギャップが本作の根本的な面白さを支えている。

なので、舞台設定としては面白くなる要素は多分にあるのだ。

ところがである、これが上下巻を通して読むとなんとも読後感がイマイチなのだ。
これこそが少年漫画の持つ原罪としての「連載時インパクト主義」の弊害である。

昔、どこで読んだかは忘れたが「某ともだちが出てくる20世紀のマンガ」に関する作者か編集者かのインタビューで、「最後が面白くなくても、それまでの週刊連載としての体験が面白ければエンターテイメントとして成立している。一番最後が一番面白くなるような話づくりをしていない」というような考えが示されていた。

個人的にはこの思想がかなり嫌いだ。

風呂敷を広げまくって、最後に畳まないのであれば創作の幅は広がるだろうが、期待を込めて読んでいる読者のそれまでの時間はどうなってしまうというのだ。だから、最後の完結が綺麗でない作品はNG。

SNSがこれだけ発展した社会において、話題先行、インパクト先行が売り上げに貢献するのは良くわかる。ただ、だからこそ読者がそれまでにかけた時間に価値があったと思えるように最後まで破綻しない作品創りを期待するわけだ。


では、タコピーはどうだったかというと、一応風呂敷は畳んでいるのだが、畳み方がかなり雑なのである。タコピーが自己犠牲で消えて、しずかとまりなの二人が仲良くなってハッピーエンドという終わり方は、それまでの作品構成から見ても、ご都合主義になっているようにも感じてしまう。「大人の目線」で見れば、だ。

さて、ここで少年漫画が持つもう一つの原罪が顔を出してくる。
それが伸びきってしまった読者層の幅、という問題なのである。

タコピーのレビューや感想を見ると、素直に面白かったという意見も多い。特に連載時に色々期待しながら楽しみに読んでいた読者からすると、ハッピーエンドで良かったわけである。そして、読者の年齢層が低くなるほど、物語に対する俯瞰的な完成度や、論理的整合性や、ハッピー星の掟といった設定への期待値は低くなり、どちらかというと、主人公達が感情豊かに幸せになっているかどうか、に焦点が絞られるのである。その意味で、若い読者層が面白かったと感じれば、この作品は成功しているのだ。


その辺りが、歳を重ねてくるとわからなくなってしまうのである。

漫画というジャンルは子供だけが読んでいた時代を終えて、既に小説の座を完全に奪い、日本のエンターテイメント文化の中心に存在している。そうなってくると、相手にする読者の年齢層が広すぎるのである。それはタコピーの問題というよりジャンプの持つ根源的な原罪なのだろう。


ただ、そうは言っても誰が読んでも面白い作品というのは存在するわけで、「ルックバック」の完成度の高さと比較してしまうと、やはり、タコピー側にも改善点はある。

というわけで、色々批判を描いたので最後に、どうすれば、タコピーはもう一段上の作品になれたかを3つほど示しておきたい。

1点目はハッピー星の掟に関して、もう少しだけで良いから作品の過程で伏線を張っておくべきだった点だろう。最後にタコピーが自己犠牲によって壊れたハッピーカメラを直せるという設定が、それまでの物語の中で少しも匂わせられていないのは、作品構成上、痛い。

もしかしたら、作中のどこかに描かれているのかもしれないが、作品を3回ほど読み返してこのレビューを書いている身なので、仮に書かれていたとしてもあまりに弱いのである。

2点目は東君の存在の問題である。作品を良く読むとわかることだが、実はこの物語は東君がいなくても成立している。実際問題、東君がまりなの死体を隠ぺいしてくれるシーンをカットして、夏休みに突入させても何も問題ないのである。

また、まりなの過去編の中でも東君は恋人として登場するわけだが、それだけが原因でまりなが母親殺しに走る点もキャラクター設計上、少し無理がある。
夫に裏切られおかしくなったまりな母が、まりなが彼氏を連れて来るという事で、なぜそこまで機嫌が良くなるのか。男に裏切られた女性キャラクターとしては、少し論理破綻してしまっているのである。ただ、この辺りはせっかくまりな母を序盤で登場させているのだから、そのときに少し匂わせるだけでも全然違うので、これもやはり構成の問題だろう。


そして、最後の問題はタイトルの伏線を完全に回収しなかった事だろう。

原罪とは何なのか、恐らくではあるが「依頼人を一人にしたこと」と思われるが、
「おはなしをしなかったこと」とも読み取れる。その辺りは個人の解釈に委ねられているわけだが、これだけ魅力的なタイトルにしたわけだから、作中で作者からのアンサーがあっても良かったのではないだろうか。

というわけで全般的に作品構成や伏線といった技術面での問題が改善されていれば、本作はもう一段、面白い作品として大人の読者も満足させられる傑作になり得ただろう。

あと、タコピーの原罪を読んでジュブナイルタイムリープジャンルに興味を持った人には是非「ルックバック」をお勧めしたい。これこそが誰が読んでも面白い短編漫画のお手本である。

最後はお約束のタイザン5先生の次回作にご期待ください、で締めることにする。

 

下巻より引用




 

 

 

 


超傑作ルックバック。傑作すぎて、レビューかけてない。
総合評価4以上は間違いない。下手すれば4.5以上。

 

あと、上下巻で続きが気になるサスペンスでなぜか思い出したウツボラも張っておく。

 

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