総合評価・・・3.80
最近のエッセーマンガの中で最もお気に入りの作品を今更ながらレビュー
twitterやnoteで読んでいたが、もちろん作者「渡辺電機(株)」の印税に貢献するために新品で購入である。
しかし何度読んでも面白い、本当に素晴らしい。
本当はもっと高い点数をつけたいのだが、如何せん、まだ1巻目で続きが出るかもしれないので、一旦今の評価。
55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話
もう、このサブタイトルが本作の魅力のすべてを物語っており、社会が求める理想の父娘像がここにある。
おそらく55歳という年齢が良かったのだろう。
これが40代だったら、本人にもっとトゲや欲望が残っていて、このバランスの良い父娘関係は築けなかったのではないだろうか。
また、現代のサラリーマンパパにはない近所の楽しいおじさん感覚が、子供達にも伝わったのだろうか、娘やその友達からも人気な作者の姿がなんとも微笑ましいのだ。
しかし、それ以上に本作の魅力を支えているのは、やはりその圧倒的な苦労を面白おかしく描いている作者の人間性だったのではないだろうか。
DVを後悔するシーンなどは本当に抜群で、子育ての苦労を思って泣けてくる。
これはもう絶対に親なら必ずうなづける、あるあるのシーンなのだ。
また、決して金銭的に余裕がある生活をしているわけでもないであろうに、娘の習い事から挫折の流れにおいても、愛情をもって子供に接しているのが伝わってくる。
そんな子育ての苦労の背中があったからこそ、ママ友グループにもすんなり受け入れられたのだろう。55歳の初老の男性が連れ子と新たな生活を築こうとしている姿は、きっと微笑ましかったに違いない。
巻末のカラー書き下ろしも大変素晴らしいので、noteだけ読んでいる人にもぜひ購入をおすすめしたい本作なわけだが、最後に書き下ろしの中からお気に入りのコマを一つだけ。
いい大人が、2人の連れ後の父親になるというのは決して楽な決断ではない。
それまで54年も遊び暮らしていたらなおさらだろう。
しかし、だからこそ、こんな風に遊び心でチャレンジしてみることにこそ人生の面白さと味わい深さがあるのではないだろうか。
子供の将来を真剣に考えろとか、養育費をどうするんだ、とか、そんな堅苦しいことばかり考えても仕方がないではないか。
それよりも笑って楽しく暮らしてくれる父親がいるほうがずっと良い。
社会の中で自分だけを追求して孤独化する老人が増える事は、地域社会において決して良いことではない。こんな風に子育てを人生の新しいチャレンジと考えてくれる独身男性が世の中に増えれば、きっと日本社会の未来はもっと明るくなるのではないだろうか。
子育てするには50代はピッタリである。
そんな希望を感じさせられる作品だった。
2巻も必ず買うので、なんとしても幸せな結末を見せつけてほしい