つれづれマンガ日記 改

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異色短編集 ~ 藤崎竜作品集

総合評価・・・3.64


最近、封神演義のレビューがやけにPVが多いので、それに関連して久しぶりに読み直した藤崎竜の各種短編集を再レビュー。

ちなみに藤崎竜の短編を読みたい場合は、以下2つの方法がある。

  1. ジャンプコミックス藤崎竜短編集(全2冊)
    こちらは全て短編作品が収録されている。収録作品は以下。
    (1冊目)
    ・ハメルンの笛吹き
    ・WORLDS
    ・TIGHT ROPE
    ・SHADOW DISEASE
    ・SOUL of KNIGHT
    (2冊目)
    ・DRAMATIC IRONY
    ・ユガミズム
    ・milk junkie
    ・異説 封神演義
  2. 文庫版の藤崎竜作品集(全3冊)
    こちらは連載作品と短編集の混合で収録作品は以下。
    (1冊目)
    ・PSYCHO+(サイコプラス)
    ・DIGITALIAN(デジタリアン)
    (2冊目)
    サクラテツ対話篇
    (3冊目)
    ・天球儀 その他過去の短編集。

    最後の三冊目が短編作品集となっているのだが、収録作品のほとんどは前述の藤崎竜短編集に収録されていた作品となっており、唯一「天球儀」だけが新作となる。逆にこの3冊目に収録されていない短編は、「WORLDS」と「SHADOW DISEASE」の2作品。

とまぁ、そんな前提であとはざっくりと各作品に対してのレビュー。まずはジャンプコミックスの短編集から。


  • ハメルンの笛吹き
    18歳で手塚賞佳作を受賞したバケモノ級のデビュー作品。最後の展開に粗が目立つなど課題はあるが、普通に考えて巧すぎる。
  • WORLDS(ワールズ)
    綺麗にまとまった短編集。作者らしいダークな持ち味が活かされていて、今回レビューする短編集の中ではわりと好き。
  • TIGHT ROPE(タイトロープ)
    最も当時の作者らしい雰囲気のある作品。90年代発表と考えると素晴らしいが、現在ではありがちに思えてしまう設定に見えるあたり、やはり当時から圧倒的に前衛的な作品を作っていたことがよくわかる。
  • SHADOW DISEASE(シャドウディジーズ)
    ひとことで説明するとドラえもんの「かげがり」
  • SOUL of KNIGHT(ソウルオブナイト)
    アタウアルパのキャラとデザインが最高。さすがに作者お気に入りだったようで、目次ページに出てきたり、のちの封神演義の申公豹に活かされている。

    (短編集1巻の目次より引用)


  • DRAMATIC IRONY(ドラマティックアイロニー
    作画のクオリティが異常。作者のコメント通り、これは絵の修正に天文学的な時間がかかったのも頷ける。
  • ユガミズム
    作者自身があまり好きでないとコメントしている通り、ある程度話の筋が見えてしまう部分があり、なんとなくキレが悪い。
  • milk junkie(ミルクジャンキー)
    作者もお気に入りのようだが、確かにこれが一番面白い。最初期の作品に比べると暗すぎず、それでいて徐々に悪い習慣になってくる遊びすぎの部分が少なく、最後はしっかり毒を効かせてくる。そんな作品。
  • 異説 封神演義
    連載した封神演義とは全く別の封神演義。ファンの人が期待して読むたぐいの作品ではない。


ここまでが藤崎竜短編集。ここからは文庫版の作品についてのレビュー。

  • PSYCHO+(サイコプラス)
    連載作品なので短編集扱いにしてしまうのも悪いのだが、全2巻で打ち切りになった作品なのでこの中でレビュー。当時で考えると斬新さは凄いのだが、作品がどこに向かってどこに着地するのかが全然わからなかった構成面が弱点で、まだまだ少年が読んでいた時代の本当の意味での少年ジャンプだった事を考えると、打ち切りという結果も仕方なかったのかもしれない。
  • DIGITALIAN(デジタリアン)
    綺麗にまとまった短編作品。普通に面白い。
  • サクラテツ対話篇
    連載当時、ついに作者は頭が壊れてしまったと噂になった作品。もはや奇書と呼べるレベル。大人になって読み返すと作者が当時ハマっていたという哲学がテーマになっている事もわかるし、後に時代を動かすことになる「この中に宇宙人 未来人 異世界人 超能力者が居たら私の所に来なさい」を先取りしているすさまじいエネルギーの作品なのだが、当時の少年達に理解できるはずもなかった。
    ただ、これ以降、ここまで全力で作者の趣味全開で少年ジャンプの紙面で遊んだ作品はなかったのではないかと思うと、マンガ読みなら一度は目を通して良い作品といえるだろう。最も藤崎竜らしい作品である。
  • 天球儀
    無難に面白いがサクラテツの圧倒的なぶっ飛び方を読んだ後だと、比べてはいけないのだが普通に思えてしまう。これは販売した側の収録順番が悪いのではないだろうか・・・



最後になるが封神演義のレビューの時にも書いていた通り、時代を先取りしすぎている作者なので、今の時点で90年代に発表された多くの初期作品を読んで面白く感じられるかは正直わからない部分が多いが、当時は本当に圧倒的に斬新で面白く感じた、という事だけは主張しておく。


 

 

 

 

 

 

封神演義のレビューはこちら。

mangadake.hatenablog.jp

 

 

サクラテツ対話篇に興味を持たれた方は、もう少し踏み込んでこちらのレビューもオススメ。やはり大人になってから改めて読むと、その面白さがわかる作品のようだ。

www.shachikudayo.com