総合評価・・・3.76
久しぶりの更新という事で、懐かしの封神演義である。
ネタバレありなので、未読の方は禁止。
さて、ジャンプ連載当時に大好きだった本作を
約20年ぶりぐらいに読み返してみて感じたのが、
「あれ、この程度だっけ?」という何とも辛口な感想だったが、
よくよく考えたところ、以前エヴァ感想の時にも書いた現象と同じだった。
いわゆる、時代を先取りしすぎた、という奴である。
1996年という時代を振り返ってみると、
その独特なファンタジー設定、斬新なキャラデザイン、ケレン味のある物語展開、
そして大きく伏線を回収するラストというスタイルにおいて、
ハンターもBLEACHもナルトも、ましてやワンピースも始まっていない当時のジャンプ連載陣を振り返ると、どの作品よりも最先端のマンガ表現でジャンプに切り込んでいた作品であり、それが連載当時に感じていた本作の面白さの正体だったのだろう。
なかでも世界設定・物語構成という領域は2000年以降、強烈にマンガ界のレベルが向上していく領域の為、現在再読すると面白さが減ったように感じてしまうのは致し方ない。
加えて、バトル展開やお遊び回が何度も作中で差し込まれてしまうのは、当時のジャンプのお家芸であり、人気が出たことによる引き延ばしの負の影響ともいえる。
作者も10巻のカバーコメントで、「8巻ぐらいで終わるかなぁと思っていた」と書いており、大筋の物語だけに絞って考えれば、そのぐらいの長さで終わると最高の作品だったのかもしれない。
しかしだ。
しかし、それらの時代による影響を考えてもなお、本作の圧倒的な凄さを再認識させられたのは、この漫画の完璧な第一話ではないだろうか。
こればかりは、今読み返しても全く色あせない100点満点の完成度だった。
複雑な設定の本作の導入部を非常にわかりやすく描きながら、
太公望という当時において斬新な軍師タイプのキャラクターを立たせ、かつ、
その後、最終巻まで活躍する最高の悪役「妲己」の魅力を十分に伝え、
最強のライバル「申公豹」とのバトルを敗北で終わらせる。
この第一話は何度読んでも、やはり完璧である。
そして、全23巻を通してついに最後まで太公望はこの「妲己」と「申公豹」という魅力的なキャラクターたちと雌雄を決する事はないのだ。
これらの展開や構成力は、現代の進化したマンガと比較しても全く見劣りしない出来栄えであり、伏線SF大好きの作者「藤崎竜」の才能がいかんなく発揮された結果といえるだろう。
加えて、本作の有名な伏線回収として、表紙における第1巻の太公望と第13巻の王天君の2人だけは偽りの存在の為に逆さまに描かれているという話だが、ネット情報でその点に触れていることは多いが、192話の中の1コマでストレートに描写されていたのは当時は気がつかなかった。
こういったメタ的な描写をストレートにマンガに落としてしまうあたりも、当時の他の作品群にはない王道を嫌う異端の作者に相応しいネタバレのさせ方である。
というわけで、デビューから圧倒的に異端の名作を描き、今も活躍する作者の早熟の才能を感じさせられる作品に懐かしさを感じて、ついついほかの作品も読みたくなり「Worlds」や「PSYCHO+」あたりを古本屋で探し回らなくても、Amazonでポチれば読めるのだから、何とも便利な世の中になったものである。感謝。