総合評価・・・3.90
たまにだけれども、世間的に物凄く売れているとわかっていても、
タイミングを逃して読んでいない作品というものがある。
本作「トクサツガガガ」がその一つで、かなり初期から話題になっていたので、
何度も目には入っていたのだが、完結したら読もう、というスタンスで時間が経過し、最近やっと読む機会があったので、まぁまぁの期待値で読んでみたところ・・・
無茶苦茶大傑作でした。
読んでいなかった自分を反省。
どこから褒めれば良いのかわからないんだけれど、
まずオリジナリティが素晴らしい。
特撮というジャンルが一部のオタクを熱狂させているのは知っていたが、
その面白さを、これほどマンガで再現できた点に感動した。
特にこの手の作中劇スタイルは、一つの連載の中で2つのマンガを抱えるという、ガラスの仮面の「美内すずえ」も苦しんだストロングスタイルなわけだが、そこに挑戦し、結果として高いオリジナリティを誇る作品に仕上がったのだから見事。
次にキャラクター、これも素晴らしい。
主人公の周辺から徐々に派生していく登場キャラがどれも魅力的で、オタクという共通言語で括られているため、地味ながらも味わい深いキャラクター群になっている。
そして、最後にストーリー。
単なる特撮ギャグマンガにとどまらずに、特撮ヒーローにもらった勇気をテーマに描かれた一連のストーリーは最後まで読者を飽きさせない展開だった。
しかし、それらの各要素の魅力以上に本作が愛された最大の要因は、
やっぱり仲村&吉田の関係なのではないだろうか。
最初の頃は、特撮ヒーローを隠しながら生きる「オタクあるある」という作劇になっており、それ自体は決して面白くないわけではないが、第5話で吉田が本格的に登場してからは、明らかにこの「オタク女子二人」がオタクライフを満喫する事が主軸になり、本作品の主要テーマが大人の群像劇に変遷している。
また、そこから派生して、さらなる追加の特撮マニア仲間や、昨今の展開でありがちな「恋愛」というキーワードに逃げなかったところも、高く評価したい。
結局のところ、隠れオタクにとっての最高の憧れは、自分の趣味を延々と語り合える「親友」の存在であり、最終巻の単行本書下ろしに描かれた、
「良くも悪くもなんにも変わらない。大人になってからできた生涯の友達」
というテーマこそが、本作の魅力の全てなのだろう。
というわけで、オタク界隈で未読の方は少なかったと思われる本作を、
今更ながら一人で全力で推している今日この頃である。
「丹波庭」の次回作が今から楽しみである。