「こんな波乱万丈な人生、誰が書いても面白いマンガになるに決まっている」
はっきり言って、それぐらい田中角栄はずるい存在である。
地盤(じばん)
看板(かんばん)
鞄(かばん)=金
といわれる「3ばん」がなければ成功しないといわれる政治の世界において、
金もコネも学歴もない田舎から上京した若者。
そんな彼が政治を志し、自身は高等小学校卒の学歴ながら、
その人たらしの技術で最高学府の官僚を巻き込み政治を取り仕切り、
金の力を巧みに操り政治家達を抑え込み、
この国の宰相にまで駆け上がる。
そしてついには、
ロッキード事件というアメリカを巻き込んだ
巨大な陰謀劇を舞台に転落する。
どう考えてもその存在がマンガである。
この稀有な天才がマンガになるのはいつだろうか、
と首を長くして待っていたが大和田秀樹が
前作「疾風の勇人」に続いて挑戦してくれたのだから買わないわけにはいかない。
序盤は上京したての15歳の時代から始まり、
会社の設立、そして理研の大河内所長との出会い。
この出会い方にしても絶妙で、
偉すぎて誰もが一緒のエレベーターに乗らないという状況を逆手にとって、
あえて同じエレベーターに乗りこんで印象づけたり、
所長の行きつけの料亭に連日通い偶然を装って面会したり、
等々、とにかく人たらしとしての技術を序盤から駆使しているのが面白い。
しかし何とも面白いのは、この大和田作品の作風と、
田中角栄のキャラクターがハマっている点である。
前作の際には、ギャグマンガ的な作風が気になったのだが、
今作では全く違和感がないのに驚かされる。
それだけ、田中角栄というキャラクターが、破天荒であり、
マンガという素材にぴったりの人物なのだろう。
疾風の勇人は残念ながら志半ばで終わってしまったが、
今度こそ、区切りがつくところまで描いて終わってほしい。
政治に興味がなくても、これだけは読んでおいたほうが良い、
それこそが「田中角栄」という存在なのだ。
しかし、この帯もずるいな・・・これだけで買ってしまうわ。
↓こちらは池田勇人をテーマにした作品。残念ながら終わり方は中途半端。