つれづれマンガ日記 改

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現実路線ファンタジー ~ 放課後!ダンジョン高校

総合評価・・・3.24

入学した離島の高校には、謎のダンジョンと怪物とお宝が・・・
という、なかなか面白そうなファンタジー設定で始まる作品だが、正直、評価が非常に難しくわりと辛口レビューなのでファンの方はそっ閉じで。

 

 

さて、全11冊のうち8巻までの第一部と9巻から11巻の第二部では、物語はかなり異なり、純粋にストーリーが成立しているのは第一部までだろうか。

第一部の主人公の宇佐美とヒロインのシオちゃんの青春冒険活劇としては、まぁ第一部は何とか読めるものの、第二部の東屋と最上トキの物語はなかなか難しかったようで、第一部で出てきた伏線の回収や登場するキャラクターこそ一部は同じメンバーなのだが、最後まで大きなクライマックスがないまま完結してしまった。

この作品が決定的に難しかった要因だが、やはり、リアリティとファンタジーの共存の難しさ、につきると思われる。

ダンジョン系の面白さ、というのはウィザードリィなどに端を発するいわゆる、「発掘による宝物の回収」か、「キャラのレベルアップ」という概念のどちらかなわけだが、ファンタジー要素を排除した高校生によるダンジョン探索のため、レベルアップという概念が存在できない。また、「発掘される宝物」に関しても何か細かい設定があるわけではなく、極端に強い「オーパーツ」という特殊道具だけが無秩序に配置されているので、レアアイテム発掘による探索の楽しさも少ない。そのため、結果として各キャラクターの成長というものが描きづらいのである。

もちろん、主人公に筋トレさせたり特殊なアイテムを作らせたりしてサバイバルすることで、レベルアップという概念をマンガに再現させる類の作品もあるのだが、本作はその手法を取らずに、「オーパーツ」と呼ばれる極端に強い道具を物語初期から主人公に持たせることから始めてしまったので、なおさら、主人公の成長感が薄い。

結果として、なんだかんだで「オーパーツ」の力で主人公は苦難を乗り越えるわけだが、そこにはレベルアップの概念も、レアアイテム発見の喜びもなく、淡々とダンジョンに入ってはなんとなく巻き込まれた苦難を乗り越える、という旅の繰り返しになってしまうのである。


そのわりには、現実路線は貫いているのでダンジョンで普通に人が死ぬし、どうしてそこまでしてダンジョンに入ろうとするのかを描くには巻き込まれ型主人公の限界で、設定を現実的にすればするほど、行動原理の不明さが浮き彫りになってしまっていた。


では、キャラクターではなくダンジョンがある源五郎島や弾正高校という設定に面白みがあるかというと、なんとか第二部でそのあたりが明かされてくるものの、これも本作独自の何か圧倒的な魅力があるかというと、そこまででもない。唯一、島の当主である「田沼源九郎」のキャラクターは立っていたので、そのあたりもう一段面白い設定が隠されていれば良かったのだが、序盤で何か匂わせるものはあったものの、結果としてこちらは伏線回収されないまま終わってしまった。

おっぱい先輩(朝生田悠美)も、登場時のインパクトほどの動きが取れず、太田先輩もオーパーツの面白さ以上の魅力が発揮できなかったため萌え路線のみで走ることもできず、結果としてキャラクター軸で読んでも設定軸で読んでも、まぁそこそこ、という仕上がりになってしまったわけである。

 

前作ライコネンの熱帯魚でも感じたことだが、ストーリー・キャラ・設定・萌え、をどれも満遍なく混ぜている類の作品を作るので、どこか一つ、作者「山西正則」の強みを決めて作品作りをすると次回作はさらに面白くなるのではないだろうか。


ファンタジー+青春冒険ジャンルで巻き込まれ型主人公と健気なヒロインが好きな方には、お勧めできる作品である。