総合評価・・・3.30
発表当時、第一話をネットで読んだときに、その完成度の高さと雰囲気の良さに驚いた作品。
突如として氷河期になり食料が無くなってしまった現代日本を舞台に、ダメ男子「ユキくん」としっかりした少女「リッカさん」の二人が肩を寄せ合って生きるというホームドラマは、全3巻完結と短くはあるものの、その独特の優しい世界観と相まって印象に残っている。
ただ序盤の頃は氷河期になってしまった世界を相手に、人間が奮闘していく世界観が面白かったのだが、どうしてそのような世界になってしまったのかという設定に関する背景部分や、二人の出会いといったあたりはそこまで詳細には語られず、あっさりと終わってしまったあたりが残念だった。
これは推測になるが、氷河期でご飯が食べれない中でも家族で温かい食事を取る、というメインテーマが先に存在していて、そこからストーリーを膨らませたぶん、そのあたりの設定がゆるかったのだと思われる。せっかく線の細い優しい雰囲気の作風なので、日本ではなくて異国のファンタジー設定にしたほうが良かったのではないかなと、個人的には感じた。
あと、ここは好き嫌いが分かれる部分だろうが、ラストの展開があっさりしすぎな気がしてしまった点が残念な部分だろうか。別にドラマチックな展開が全てとは言わないが、激しい逆境から平凡な日常の幸せを得た二人だからこそ、もう一度そこに変化が起きた時には、大きな感情の動きがあって良かったのではないかと思ってしまうのである。
ともあれ魅力的な世界観と作画は間違いないので、試し読みで気に入ったら一読をおススメしたい作品である。
ちなみに作者の「久野田ショウ」のアカウントを見る限り、2021年にジャンププラスでの読み切り作品「地球儀の陽のあたらざる裏がはに」を発表したのが最後のようだ。
ただ、この時の作品は画風がジャンプ的に寄せられてしまっているが、個人的には本作の頃のような線の弱い時代の画風のほうが好み。
いつか新作を読んでみたいものである。