つれづれマンガ日記 改

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ポンコツロボコメディ ~ ぽんこつポン子

総合評価・・・3.54

作者「矢寺圭太」の「ずっと青春ぽいですよ」が最近お気に入りなので、同じ作者のぽんこつポン子のレビューを書くことに。

頑固な独り暮らしのおじいさん「吉岡」のもとにやってきた30年前の型落ちメイドロボット「ポン子」、といういかにも続きが気になるタイプの設定から始まる本作は、全10冊、ちょうど良い長さで完結しており、非常に読み心地の良い作品だ。

特に、作者の描くキャラクターと世界観の描写が抜群で、ギャグに寄りすぎもせず、かといってシリアスすぎもせず、日坂町という舞台の中で徐々に増えていく登場キャラクターと、町の人々の中に馴染んでいくポン子の姿に引き込まれて、ついつい最後まで読まされてしまうのである。

また、中盤から活躍する都会の孫娘ゆうなとの日常も非常に魅力的だし、女子高生の茜ちゃんと藤さんの二人も青春っぽいし、喫茶店のマスターもいい味を出している。

要はこの世界に登場するキャラクター全般が非常に生き生きとしていて、作品としての世界観が完成されているのだ。

7巻より引用 青春ぽいですよ


ただ、残念な点をあげるとすれば、これだけ面白い作品を創れるのだから、せっかくだからギャグやコメディばかりに振りすぎず、もう少しだけシリアスな展開も読んでみたかったなぁと感じた点だろうか。

特に本作はその設定上から、ポン子の記憶の秘密はどうなるのか、もしくは、おじいさんとの日々の最後はどうなるのか、といった点において、描き方によっては物凄くシリアスに盛り上げることもできる仕掛けが揃っていたので、その点に深入りせずライトなコメディとして終わってしまった点は残念だった。

もちろん、日常コメディ作品として十分に面白いし、そこに踏み込みすぎてしまうとシリアスに寄りすぎてしまうという考え方もあるのだが、全10冊の中にクライマックスと呼ぶべき盛り上がりがあれば、さらに一段高い作品として楽しめたのではないだろうか。

実際、ポン子以外の登場ロボの過去や、亡くなったおじいさんの妻「千秋」の過去などは非常に読み応えのあるシリアスな雰囲気を描けていたのだから、そのレベルの作品を描ける実力がある作者だと思うのだ。

なので、そのあたりの本格派な展開は現在の連載作品「ずっぽよ」に期待したいところである。

 

ちなみに各巻の巻末に毎回ついているウソ予告のクオリティは最高。よくまぁこんなに色々なタイプの作画を使い分けて頑張ったことか・・・この労力に報いる売上が伴っていれば良いのだが。

本作はメイドロボジャンルといっても萌え要素が強すぎず、町の住人も老若男女活躍する類の物語なので日常コメディジャンルが好きな方には是非おススメしたい良作である。