つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

はだしのゲン

戦争ジャンルを読みたくなって、
はだしのゲンを物凄く久しぶりに再読。

子供の頃に読んだ中で最も鮮明に記憶に残る作品であり、
現在の戦争や平和や左や右に対して少なからず影響を与えた本作だが、
物語の序盤、主人公のゲンが家族を失う体験が、
作者「中沢啓治」の本当の体験だったという事はご存じだろうか。

文庫版の1巻で語れるあとがきの中で、その壮絶な体験は語られており、
塀の陰にいる事で命からがら原爆を生き延びてしまったゲンの存在は、
まさしく作者本人の体験した出来事だったと考えると、
この作品の持つ圧倒的な迫力も頷けるわけである。

しかし、作中で何度も繰り広げられる政権批判や天皇批判は、
ゲンという若者のフィルターを通してしまう為、
それ故に稚拙な左翼思想のマンガと読まれてしまうのも本作の悲劇だ。

その辺りを見事なまでに解説しているのが、
文庫版最終7巻の「呉智英」の評論であり、流石としか言いようがない。
はだしのゲンという作品を理解するうえで、
この解説は是非目を通しておきたいところである。

運命に抗う一人の若者の生き様を描いた本作の持つ迫力は、
近年のマンガ家が束になっても到底かなわない、
作者の命がけの怒りで描かれた作品なのである。

f:id:mangadake:20180218192103p:plain