つれづれマンガ日記 改

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藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版

年の瀬は名作を、という事で長文である。

日本国民にとって不朽の名作を残し続けた藤子先生だが、
A氏の最高傑作を「まんが道」とするなら、
F氏の最高傑作は本作ではないだろうか。

特に、今回紹介するSF短編PERFECT版は、
多少プレミアがついてしまっているが、
大全集とほぼ同じ全話が収録されているシリーズで、
F氏の圧倒的な天才性を感じさせられる必読の最高傑作である。
また、発表年代の古い作品順に全8冊に収録されている
本作の構成が素晴らしい。

まず、60年代からの初期作品が収録される第一巻だが、
最も有名な作品「ミノタウロスの皿」が収録されている。
しかし、個人的にはこの作品は功罪相半ばの問題作である。

F氏のSF短編の代名詞のように知られる有名な作品だが、
最初期に発表された作品でもあるため、
面白さという意味では、他にも面白い作品が山ほどある。
しかし、この作品を読んでF氏のSF短編をわかったつもりでいる
読者が多い事が残念でならない。

第一巻収録作品で圧倒的に面白いのは、
自身の描く少年マンガの絵を活かした奇妙な物語「ヒョンヒョロ」と、
性欲と食欲を転換させた大傑作「気楽に殺ろうよ」の2作で、
ここは確実に抑えておきたい作品である。

 

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (1) (SF短編PERFECT版 1)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (1) (SF短編PERFECT版 1)

 

 

引き続き70年代前半の作品が描かれる第二巻は圧巻である。
ネットでも有名な「定年退食」をはじめとしたブラックな読み応えの
作品が多数収録されている。
懐かしい故郷に戻ってきた主人公を描いた「ノスタル爺」。
当時の終末思想をこれ以上なく反映させた「箱舟はいっぱい」。
後味の気味悪さが群を抜く「どことなく、なんとなく」といった傑作に加え
起承転結の流れが完璧なマンガのお手本のような「ポストの中の明日」。
全くもって文句のつけようがない作品群である。

 

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (2) (SF短編PERFECT版 2)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (2) (SF短編PERFECT版 2)

 

 
引き続き多数の作品を輩出する70年代作品の収録が続く第三巻。
SF少年マンガの有名作「ひとりぼっちの宇宙戦争」はこの巻に収録されている。
その後、いくつもの傑作を産むことになるパターンの一つである
パラレルワールドジャンルの「分岐点」。
その他、短編作品が多めに収録されている点も特徴的である。

 

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (3) (SF短編PERFECT版 3)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (3) (SF短編PERFECT版 3)

 

 
第四巻には、ついに有名作「カンビュセスの籤」が収録される。
この作品の持つスケールは、やはり凄い。
また、唯一F氏が原作担当になり、作画を「小林麻美」が担当する
「宇宙人レポート サンプルAとB」のラストも非常に良い。
宇宙人が眺めるロミオとジュリエットというシュールな作品を、
ラスト数ページでここまで物語として完成させる手腕は尋常でない。
優しい読後感の残る「未来ドロボウ」も秀作である。
その他、文明の停滞と種の滅亡を結び付けた「老年期の終り」も、
1978年発表という背景を考えると、素晴らしい慧眼だろう。

 

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (4) (SF短編PERFECT版 4)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (4) (SF短編PERFECT版 4)

 

 

第五巻の中ではやはり、ラストの転回が素晴らしい「流血鬼」は抑えておきたい。
また、ブラックユーモア寄りの作品は少なく、SFを舞台にした少年マンガが多い点が
この巻の特徴だろう。これは、少年誌連載の収録作品が多い事にも起因している。
最終話の「メフィスト惨歌」もF氏の博識ぶりが伺えるオチといえるだろう。
 

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (5) (SF短編PERFECT版 5)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (5) (SF短編PERFECT版 5)

 

 
第六巻からついに80年代の作品が収録されてくるが、
この巻は傑作だらけである。
神様をテーマにした「創生日記」と「神様ごっこ」。
パラレルワールドジャンルの傑作「パラレル同窓会」。
そして、シリーズ中でも最高傑作と思える「あいつのタイムマシン」が何より凄い。
あの何の変哲もない一コマで、世界を一変させる展開は衝撃である。
 

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (6) (SF短編PERFECT版 6)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (6) (SF短編PERFECT版 6)

 


 第七巻では、以前の類似テーマを洗練させた作品が多い点が特徴的である。
テレパーシーを題材にした「テレパ椎」や、宇宙旅行と時間の概念を
利用した「旅人還る」。ラストシーンが有名な「ある日......」等も、
過去の同系統のテーマの進化形といえるだろう。
また、七巻ではカメラのセールスマン「ヨドバ」氏も活躍しており、
F氏版とも言えるセールスマンを展開してくれる。

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (7) (SF短編PERFECT版 7)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (7) (SF短編PERFECT版 7)

 


最終第八巻でも、引き続き「ヨドバ」氏が活躍しながら、
80年代をほぼ最後に、SF短編シリーズは終了するのである。

 

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (8) (SF短編PERFECT版 8)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (8) (SF短編PERFECT版 8)

 

 


あとは、唯一収録されていない作品としては、
異色作「未来の想い出」あたりかもしれないが、
あの作品自体は面白さも含めて残念ながら晩年の作品となってしまっているので、
本シリーズに収録されなくて良かったのかもしれない。

 

藤子・F・不二雄大全集 中年スーパーマン左江内氏/未来の想い出

藤子・F・不二雄大全集 中年スーパーマン左江内氏/未来の想い出

 

 
藤子・F・不二雄といえば「ドラえもん」と思われがちであり、
それも間違っていないほどドラえもんは傑作なのだが、
少年マンガ以外の世界にも手を伸ばそうと天才が足掻いた軌跡として、
そして、商業的に全く成功しなかったという点も加味すると、
やはり、このSF短編群こそをF氏の最高傑作として称えたい。

未読のままでは人生が勿体ないほどの、
マンガ史に残る大傑作である。


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最後に余談だが毎年実施している総合ランキングだが、
今年、ついにエンタミクスが廃刊になってしまい作成するか思案中。
エンタミクスのランキングも混ざらないと、
どうにもバランスが悪く、良いランキングにならないので、
非常に困ったものである。