つれづれマンガ日記 改

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ホーリーランド

数多ある格闘マンガの中で、
お気に入りとして選んでしまうのが本作だろう。
今までのどの格闘マンガよりも、
本作が論理的に練られた作品である点を評価したい。
まず主人公が引きこもりのいじめられっ子という点が良い。


自分のどうしようもない人生を忘れるために、
ただ無我夢中で毎日シャドーを繰り返し、
素人には真似できないストレートを身に着けた、
という点に関しての描写が非常に上手い。

また、いじめられていた頃の自分の中に培った憎悪が、
ストリートファイトをやる上で決定的に重要な
闘争心につながっている点も大変論理的だ。

とにかく最初から最後まで単に暴力・格闘しか
描いていないにも関わらず、論理が登場しない場面が見当たらない。

主人公が突然切れて強くなり、ケンカに勝つ、
みたいな展開は微塵もない。
必殺技を覚えたりする事もない。


冷静さを失えば人はケンカに負けるし、
奇襲をされれば強いやつでも負ける。
格闘技の訓練をしているから強いわけでもないし、
暴力は暴力でしか帰ってこないという虚しさもしっかりと描く。

そういった当たり前の事を描いた格闘マンガは今までなかったのだ。


90年代の夢見がちな時代のマンガと異なり
ひたすらリアリティを求めた一つの形がここに結実している。


また一つ新しいマンガのジャンルを生み出した才能
森恒二に惜しみない賞賛を送りたい。

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