作者「中村珍」の代表作である。
女性二人による、殺人からの逃走劇を全3冊で描いた本作は、
同性愛者としてカミングアウトしている作者ならではの
視点や思想に満ちており、読者に圧倒的な熱量で迫ってくる。
正直、面白い面白くない以前に思考を強制されるので
疲れる類の作品でもある。
ただ、作者が強烈に何かを訴えたい事は確かに伝わってくる意味で、
本物に分類されるべきだろう。
登場人物の背景や、精神描写のリアリティも高く、
何の計画性もない逃走劇と、
それ故に描かれるキャラクターの内面の変遷は、
マンガを通して作者の哲学を読みたい人にとっては、非常に面白い。
二人の逃走劇の結末を、是非見届けてほしい作品である。
この頃の原稿と比べれば、作者が「アヴァール戦記」で
感じていた憤りも当然と言えるだろう。