つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

アヴァール戦記

「群青」で名をはせた作者
中村珍」によるアヴァール物語。


物凄くファンタジー色の強い表紙はフェイクで、
本作は、アヴァール=けちをテーマにした
ドキュメンタリー作品である。


内容的には、絵を物凄く凝って描くと、
アシスタントさんの代金や食費等も含めて、
どの程度お金がかかるか、
そして、原稿や印税でどの程度儲かるか。
その辺りを徹底的にアヴァールの視線で描いている。


ある意味「銭」とも似ているのかもしれないが、
とにかく無駄に作画にお金をかけていた
作者ならではの、魂の嘆きが伝わってくる。


現在作者は、全く作画に力をかけないで済む
ドキュメンタリー系の作品を多く発表しているあたり、
描きこめば描きこむほどほど赤字になる
作品から逃げ出したかったのかもしれない。

もしくは、そこで稼いだお金を
次回の大作の準備金にしているのかもしれない。

単行本作業をしても1円にもならなかったり、
アシスタントにご飯をご馳走したら赤字になったりと
様々な観点から描かれた
マンガ業界にまつわるアヴァール話は、
他の作品では読めない豆知識に満ちている。


特にコマ辺りの時給を換算する棒人間物語や、
描写をアナログからデジタルにすると
いかに時間が削減できるかなどの考察は、
この作者レベルで画力にこだわっているからこそ
描ける豆知識であり、非常に参考になる。

普段、私たちが何気なく読み飛ばしている
マンガの背景に、どれだけの熱量が込められているのかを
感じられるようになる、ある意味新しい作品。

かなり個性の強い作者なので、
読者を選ぶ作品ではあるが、
マンガ業界に興味がある方にはオススメしたい。

 

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アヴァール戦記 コミック 1-3巻セット (BUNCH COMICS)

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