前から気になっていたものの、
なかなか読む機会がなかった本作をやっと読了。
マンガ総合ランキングを毎年作っているので、
滅多に大物を読み逃すことはないのだが、
本作はマンガ大賞だけにしか登場しなかった珍しいタイプの作品で、
完全にノーマークだった事が悔やまれる。
作品としては、非常に粗削りで未熟な部分があるのだが、
総合評価として殿堂入りさせる事にした。
作者と作品の知名度からすると、
恐らく今までの殿堂入り作品の中では、最もマイナーな部類だろう。
高評価の大きな理由としては、圧倒的なオリジナリティと、
何より、昨今のマンガの負の側面である、
秘密を引き伸ばして、最後にろくに風呂敷を畳まない類の作品とは
一線を画していた点だ。
ストーリーは最初から最後まで淀みなく展開し、
物語に隠されたオチにも違和感はない。
キャラクターも、対比のとれた2人組の主人公が、
最初から最後までその「生き方」を軸に描かれており、
ストーリーを支える重要な要素になっている。
一般人から見れば違和感のあるラストが、
作品として綺麗にまとまっているように見えるのは、
この異端の主人公によるところが大きい。
また、画力の側面も素晴らしい。
百万畳ラビリンスという不思議世界を
様々なカメラワークを駆使して
十二分に紙の上に再現できている。
構成は、複雑な物語を全2冊で完結させている腕前からも、
十分及第点ではないだろうか。
最後に、オリジナリティだが、
デジタルな感性を感じる新しさがとても良い。
総じて殿堂入りに相応しい作品であった。
ただし、王道作品ではないのでその点だけは注意。
これは、作者「たかみち」が描きたい世界を、
思う存分に描いた結果、
それが奇跡的にもエンターテイメントとして
高いレベルで成立していたという
稀有なパターンのバグ作品なのである。