吉田秋生は、「あきみ」ではなく「あきお」だと
長い間誤解していた。
しかし、それも無理はないと思う。
なにせ、作品が、「カリフォルニア物語」や「BANANA FISH」
そして本作「吉祥天女」だ。
どう考えても当時の少女マンガの枠に収まっていない。
この手の「オリジナリティ」という才能は、
一体どこで身に着けるものなのだろうか。
本作は、学校を舞台にした、
一人の少女の心理を描いた
ホラーミステリーの傑作である。
いや、この主人公「叶小夜子」を
少女と評するのは相応しくないかもしれない。
絶世の美女であり、稀代の悪女。
菩薩のような柔和さと、鬼神のような恐ろしさを
兼ね備えた女性。
およそ遺産相続に巻き込まれた
類型的なヒロインと異なり、
彼女は自分自身の手で持って、
世界を変えていく。
昨今のマンガなら珍しくはなかろうが、
80年代前半にこのプロットは凄い。
その壮大なタイトルに恥じない名作である。