つれづれマンガ日記 改

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リバーズ・エッジ

岡崎京子の描く線は魅力的だ。

ただし、本作の真髄は
そのモノローグにあるといって過言でない。


「だけどそれがどうした
 実感がわかない現実感がわかない」


何度となく繰り返されるこのフレーズ。


「あたし達は何かをかくすためにお喋りしていた
 ずっと
 何かを言わないですますために
 えんえんと放課後
 お喋りをしていたのだ。」


一度読むと忘れられない突き刺さるモノローグ。


自分の今いる場所が本当に
自分のいるべき居場所なのか、
そんな事を探さずにはいられない十代の頃。

そして、そんな自分を
無気力に遠くから眺めているからこそ、
ますます遠ざかっていく現実感。

そんな彼等の前に横たわる、
川沿いの死骸。

また、マンガ論的に眺めると、
最初と最後に登場する、
橋のシーンが興味深い。

モノローグで埋め尽くされる最初と、
全くの無音の世界の最後の描写。


これこそが、主人公「ハルナ」が
世界に実感を持ち始めた証拠なのだ。
だからこそ、彼女は最後に心から泣くのだ。
ただ胸が苦しいだけの涙を流すのだ。

少なくとも私はそう読んでいる。
勿論、様々な読み方があり、
色々な人がこの作品に心を抉られている。

だからこそ、今なお
名作と呼ばれ続けているのだ。

まだマンガに夢と憧れが詰まっていた
90年代に既に、時代のリアリティを描く作品を
発表していた事の偉大さも付け加えておきたい。

若いうちに読むと
深淵に覗きこまれる事は間違いないが、
それでも、自分の居場所に不安を感じ始める、
そんな時期にオススメしたい傑作である。

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リバーズ・エッジ オリジナル復刻版

リバーズ・エッジ オリジナル復刻版