(2012年評)
娚の一生を読むと考えさせられるのは、
女性の憧れについてである。
一昔前には、この若さと可愛らしさを持つ設定の
主人公が35歳未婚という事はあり得なかっただろう。
また、その相手の男性も、独身で51歳。
悪い意味で結婚をしていなかったわけではなく、
社交的で仕事も出来るが、独身でいた男性。
こちらもなかなか現存しそうにない。
けれども、結果として、
西炯子の大出世作となったわけだから、
世の中のニーズを満たしていたのだろう。
カレセン好きな女性には、
大変よい作品に仕上がっている。
30台半ばの女性の、
少し曲がってしまった恋愛世界が、
ゆっくりと紐解かれてゆく様は、
読んでいて、心地がよい。
また、本作が幸運だった点は、
あの出来事がラストに描かれている点である。
リアルタイムで連載されていた際には、
少々力技がすぎる展開に思えた本作のラストも、
現在読んでみると何の違和感もない。
まさに事実は小説より奇なり、だ。
全四冊。軽く読むには丁度よい長さの作品である。