つれづれマンガ日記 改

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あすなろ白書

柴門ふみ」が描いた
最も壮大な実験作。

それが「あすなろ白書」に対しての
素直な感想だ。


作者が最も描きたかったテーマを
描いた故に、そのテーマに翻弄された作品。


主人公「なるみ」の
女性としての描写に関しては、文句の付け所が無い。


この時代に、女性を自由に描かせれば、
柴門ふみを超えるマンガ家は皆無だったのだから、
作品としては十分に面白いのだ。


問題はやはり作者が重視した
もう一人の主人公
「掛居保」である。


描きたいテーマや
キャラクター性はよく伝わる。
イメージモデルが実在する事もわかる。


しかし、イメージが先行する故、
現実のキャラクターとしての
リアリティを保っていなかった。


それまで、あれほど見事なリアリティで
物語を動かしていた作者だからこそ、
この「掛居」というキャラクターは
現実離れしすぎていたのだ。


故に、第一部第二部を通して、
「掛居」というキャラは揺れ続ける。


それも、演出なのかもしれないがそれ以上に、
作者が描きたい答えが先に存在して
動かされているようにしか見えない。

作者のあとがきを読んで、
ますます、その思いは確信に変わるのだ。

作者が描きたいという「第三部」は
第二部終了後20年近く経った今では
幻となりつつあるが、
第三部に、答えがあるのかは
私にはわからない。

柴門ふみという、90年代の流れを創った
偉大な才能の歴史を見るうえで、
非常に重要な作品である。

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