つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

からくりサーカス

藤田和日郎と言えば「うしおととら
この定説は今も覆っていない。

確かに、うしおととらには無駄がなかった。
作者の描きたいテーマが明確であり、
物語としての完成度が高かった。
名作である。

翻って、からくりサーカスには不評が多い。

作者自身もインタビューで認めているように、
からくり(伏線)を張りすぎた感がある。

けれども、私は「からくりサーカス」は
読むべき作品だと考えている。

特にネット等の前評判で
読むのを躊躇している方にこそ是非読んでほしい。

何故なら、本作は一読では
その面白さの理解が困難な作品だからだ。
よって、割と多くの不評が集まりやすい。

もちろん、読者に理解を要求する作品は
名作として一般人に勧めるべきではない。
が、マンガ読みにお勧めする基準には触れていないはずだ。
マンガ読みに必要な事は、その作品が面白いかどうかだけだ。

では、なぜ面白いかと問われれば、藤田和日郎
描きにくいテーマから逃げない一流のマンガ家だからだ。

例えば、多くのマンガ家は
キャラクターの死の瞬間を描けない。
それは、死んだ経験等ないからだ。
自分の死生観を紙面に晒す事を恐れるからだ。

藤田和日郎は違う。
精一杯自分のキャラクターを活躍させ、
そして、物語として必要があれば退場させる。

「どうだ、これが俺が考える人間の生き様だ!」
という自身に満ちている。

また、死に際に残す台詞も素晴らしい。
それは、作者が本気で登場キャラクターの人生を
考えていることが伝わってくる。

だから読者の想像を超える名台詞を生み出せるのだ。

マンガのレベルは、
キャラクターの出来栄えを見ればすぐにわかる。

三流マンガ家は偽者のキャラクターを作る。
存在感にリアリティがなく、感情移入がしにくい。

二流マンガ家は普通のキャラクターを作る。
作者がある程度人生で見聞きしてきたモデルを参考に、
想像力の及ぶ範囲でキャラクターを作る。

一流のマンガ家は読者の想像を超える
本物のキャラクターを生み出す。
そして、そこに違和感を感じさせない。

数少ない現代の一流マンガ家が全力で描いた本作は、
そのラストをありがちなバトルではなく、
心の救済をもって完結させようとした作品だ。

ぜひとも読んでみてほしい。
そして考えてほしい。

からくりサーカスは、それだけの時間をかけて
理解する価値のある作品である。

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