作者「山本さほ」の人生を決めたといっても過言ではない本作が、
全5冊でついに完結したが、個人的には残念な最終巻だった。
正確には確かに面白い作品だったけど、最終巻は正直、
この倍ぐらい面白くできたんじゃないか、と思ってしまう。
それぐらい4巻の最後のヒキが完璧だったのだ。
過去の幼馴染との体験をエッセイ系ギャグ作品として描いた小学生時代から、
中学高校と徐々に成長し、そして夢を見失った大人時代への突入と
4巻最後の親友との別れ。
どう考えても最終巻は号泣させられるだろうと思っていた。
しかし、結果としては時間軸の延長が描かれただけであり、
構成や作者の内面においても、ついに全てをさらけ出す事がなかった。
主人公が「マンガ家になる夢」を親友との思い出を元に実現する
自己実現的なテーマに関しては描けていたのだが、読者の誰もが読みたかったであろう
「岡崎に捧ぐ」という作品の本質である、「一番近い他人とのコミュニケーション」に関しては、正直、描写が浅かった気がする。
自分の人生に近い時間軸の物語をさらけ出すのは難しい作業かもしれないが、
「山本さほ」の人生を眺めていた読者としては、
ここはもう1歩、親友との再会や、この完結した作品を読んだ親友の反応などが
読みたかったと思うわけである。
淡々と人生を描いてきたギャグ作品だったからこそ、
最終巻だけはマンガ的にもっと構成や演出を工夫しても良かったのではないだろうか。
ちなみに直接作品とは関係ないが、2巻のあとがきは本当に素晴らしく、
これを読むだけでも本作の持つ魅力の本質が伝わってくる。
ともあれ、決して悪い作品ではないので自伝系ジャンルとしては十分合格だろう。
他人の人生の物語は、やはり面白いのである。