やはり、並の作品は描かない巨匠である。
本作も壮絶に実験的な作品となっている。
自身の悲劇的な人生から、娘達に遺言を残す母親。
金を滅ぼし、
法律・規律を滅ぼし、
男を滅ぼす。
この約束を胸に、娘達は、
世界を滅ぼす為の活動を続ける。
そのための手段、人口皮膚デルモイドZ。
誰でも完全に他人になりすませる、この人口皮膚が
世界中に蔓延し始めた頃から、
世の中がおかしくなっていく。
物語全体としては、
お世辞にも上出来のストーリーとは言えないが、
圧巻なのは、中盤の「if」の世界である。
金が滅び、規律が滅びた「if」の世界を舞台にした、
中盤で挿入されるショート・ストーリー。
これが大変素晴らしい。
全ての家族が、偽者であり、
そして真実の家族以上の家族を演じる第13章は圧巻である。
記憶に残る作品というのは、
こういった存在なのかもしれない。