情けなく優柔不断なキャラクターといえば、
本作の主人公が思い出される。
何の目的もないまま、予備校に通い、
かわいい女の子に魅かれて
東大進学コースを選んでしまい、
流されるままに日々は過ぎ去り、
二人の女性の間で揺れ動き、
結局、どうにもならない自分のダメさ加減に気が付く。
とにもかくにも目的意識が低く、
読んでいて悲しくなってくる主人公。
だからこそ、
この浪人という舞台が相応しかったのだろう。
優柔不断なダメ男がなんだかんだで幸せになる、
80年代前半のマンガと異なり、
そこから自分で一歩踏み出さなければ世の中が
変わらない事をしっかりと描いた作品。
草食系の走りとも言える様な、
物語の主人公としては不十分なキャラクターが、
ラストで見せるほんの少しの成長が、
爽やかな読後感を残す「原秀則」初期の秀作である。