(2012年評)
しりあがり寿と言えば、
個人的には「流星課長」がお気に入りである。
「どんな満員電車でも必ず座って帰る伝説の中間管理職」
風刺作品としても単純なギャグ作品としても秀逸だった。
そんな奇才が描いた、
大震災以降の日常を描いたマンガ。
震災当初からの、朝日新聞の夕刊連載
「地球防衛家のヒトビト」をはじめ、
月間ビーム掲載作品などを、
時系列に収録している作品となる。
ページの右下には日付が入っており、
どの時点で描いたマンガなのかがわかることも、
当時の記憶を蘇らせる。
話題が話題なので、
笑える作品というものでは全くないし、
作品自体の質が物凄いかと言われると、
答えに詰まる部分はある。
しかし、この未曾有の深刻な事態に際し、
最も影響力を持ちにくいであろう、
「虚構」を描くマンガ家という職業の人間が、
マンガで何かを伝えようとした、という点を高く評価したい。
やはり奇才と呼ばれる人達は、
常人とは違う何かを持っている。