「木尾士目」の鬱時代の代表的な作品であり、
大学四年生という、大人でもあり子供でもある、
就職、恋愛、将来の悩みと、様々なものに一気にぶつかる時期の
大学生を丁寧に描いた傑作。
「四年生」の時点ではエンターテイメントとしての体裁を
まだ保っているものが、
「五年生」になると、完全にそこは捨てられて、
この作者得意の痛さが前面に押し出されている。
その意味では、あまり人生の悩みと
マンガで向き合いたくない人には決してお勧めできず、
病みがちな人は、読めば鬱になること請け合いである。
また、木尾士目作品の弱点でもある、
「自身の粘着的な性質が、全キャラクターに少しずつ映る」
傾向が最も顕著に出ているのも5年生の特徴だろう。
この辺りはやはり初期の作品という事で大目に見てあげたいところだが、
どんどん登場キャラクター全員が煮詰まっていく所が良くも悪くも特徴である。
ただ、その辺りのマイナス面を差し引いてみても、
この作品が大学生という時間を再現できているかと問われれば、
その答えは「yes」なわけで、
その意味では本作は見事に完結しているのだろう。
ちなみに2ついっぺんにレビューしてしまったが、
「四年生」単体で読んでも、
マンガとしては完結しているので、その点はご留意を。
マンガで暗くなりたくない人は、一般的な学生青春物語としての
「四年生」で読むのを止めておくことをオススメする。