数ある音楽系作品の中で、
本作ほど音というテーマに
正面から挑戦した作品は少ないだろう。
およそほとんどの音楽マンガは、
音ではなくストーリーによって、
紙面の中の演奏を描く。
それまでの展開、客席に座る観客の動き等の演出により、
演奏が始まる前から、音のレベルはある程度決まっている。
そうしないと、物語が破綻してしまうからだ。
それくらい、紙の上で音楽を鳴らすことは難しい。
しかし、本作は、紙面における音楽の表現に挑戦する。
池の音、
鳥の音、
りんごをかじる音
生活の中に多様な音が溢れていることを
描写しながら、次第に、
音の世界をマンガで再現しようと試みている。
終盤の主人公「うた」の残す
「私は音楽だから」
は屈指の名シーンであり、
今までの彼女の才能が爆発する瞬間である。
全4冊。文庫版で全3冊。
一読すべき作品だろう。