つれづれマンガ日記 改

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ペット

主人公は人の記憶を操る超能力者。
その力を使って裏社会で生きていく・・・

とだけ書いてしまえば、いくらでも
見たことがあるあらすじだろう。

けれども、そもそも人の記憶を操れるとは
どういうことなのか?

その部分を、三宅乱丈
相変わらずの異端の才能で掘り下げた。


人間の記憶には、
人生で最も幸せだった時代の記憶「ヤマ」と、
人生で最もつらかった時代の記憶「タニ」がある。

人間が現在の人格を形成していられるのは、
この「ヤマ」と「タニ」のお陰であり、
その部分をいじることができれば、人間の人格を記憶を操作できる。
そして時には壊すことも・・・。


とても常人には思いつかないこの設定と、
斬新な精神世界の描写で、
本作は恐ろしい引力を持って読者に襲い掛かる。


あまりに強烈なインパクトのある作品なので、
もしかしたら読み続けることができない方もいるかもしれない。

実際、精神世界の描写は美しくもエグくもあり、
読む側にも少なからず影響を及ぼす。


けれども、本作でしか味わえない気分を
体感出来る事もまた事実だ。

全ての精神描写が、本や知識の寄せ集めによる借り物ではない、
作者の底から生み出されているものだという事が垣間見える。

読めば必ず記憶に残る、そんな作品だ。


その作風ゆえに、メジャーの表舞台にはあまり顔を出さないが、
知っている人は確実に知っている。
異端の才能と呼ぶに相応しい存在だろう。
ちなみに、オリジナルは未完の作品だったが、
昨今完全版として、
「ペット リマスターズエディション」が出版されているので、
そちらをお勧めする。

ただ、読まれる方は覚悟して読む必要がある。
心を壊されないように。

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