書きたくない、しかし読んでしまったからには書くしかない。
完結したのにずっと読んでいなかったアリエネに、ついに手を出してしまった。
このブログの作品レビューでは総合5点満点を「圏外」と称していて、
「圏外」扱いにする作品は2つだけと最初から決めていた。
それが、ご存知こち亀と、「山田玲司」の不滅の傑作「Bバージン」なのである。
Bバージンのレビューはもうずっと書く事が出来ておらず、
そもそも、あの当時読んだ面白さを再読して体験できる自信もないため、
もはや、作品レビューを書くことなくブログを閉じるかもしれないのだが、
そんな巨匠がエンターテイメントを舞台に最後に挑んだ、
自身の体験談を込めまくった作品、それが本作「アリエネ」なのである。
で、この作品だが、本当に序盤は面白かった。
当時の山田玲司全盛期を思わせるノリの良さとキャラクター造詣と、
そして実体験が十分に盛り込まれている美大受験や人間関係。
ヒロインもライバルキャラクターの予備校の講師も、
ストーリー・キャラ・構成・オリジナリティと完成されていて、
山田玲司が帰ってきたと、感動したものである。
しかし、中盤頃から雲行きが怪しくなる。恐らくこの頃から、
打ち切りの予感が出ており、物語の構成やキャラクターへの違和感が発生。
特に、東山や速水といった天才キャラたちが恋愛模様に巻き込まれるほど、
東山は佐藤に、速水の立ち位置はヒデさんになっていき、
過去のBバージンのキャラクターとのかぶり方が激しくなる。
そして、最終巻、月刊誌に移籍した後の本作の展開は、何とも言えない。
詰め込み方が強烈であり、色々と物語の落としどころはつけているものの、
あの、生涯忘れられない名シーン「カメみて、楽しい?」には、
遠く及ばなかったのである。
10代の全てのマンガ好きに読ませたい「Bバージン」のあの感動は、
やはり天才「山田玲司」の才能の全てが詰まった魂の傑作だったのだろう。
ただ、序盤の面白さを考えると、十分な時間と構成があれば、
本作はもっと素晴らしい作品になったのではないだろうか。
全てを肯定されて育ってきたポジティブな主人公が、
世界とのギャップと闘いBバージンという作品をモノにする、
そんな物語を読みたかった。
漫画はやはり難しい。