つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

ぼくらの

鬼頭莫宏」作品には、圧倒的に欠落しているものがある。
それが「死」へのリアリティーだ。


すべてのキャラクターが、
あたかも死を受け入れて、
死を平然と乗り越えようとする。


そんな妄想に取り付かれたフィクション世界。
その辺りの感覚は、
なるたる」時代から変わらず、
本作も登場人物が何事もなく死ぬ。


そもそも選ばれた主人公たちは、
ロボットに乗って世界の敵を倒す存在なのに、
その勝利と引き換えに死ぬ。


本来であれば精神異常を引き起こして
構わない状況なのに、
鬼頭作品の一連の主人公たちは、
平然と現実を受け止めているように、見せかける。


本当はそんな人間は
実在し得ないのにも関わらずだ。

作品の都合で、
極限まで人間性を削られたキャラクターを動かす、
作者の実験世界。


描かれる世界の線の細さとか弱さが
その世界観をさらに完成させている。

そして、極限まで傷つけられた人間を眺め、
読者は時に癒され、時に涙を流して生を感じる。


本当の意味での有害図書というのは、
こういった存在なのかもしれない。


そして、そんな確信犯の作者の作品を、
また懲りもせず読む私がいるのだ。

ちなみに、鬱系作品と雰囲気系作品が嫌いな方は、
鬼頭作品は鬼門なので、心すること。

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ぼくらの コミック 全11巻完結セット (IKKI COMIX)

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