正直侮っていたのが、
この「岳」という作品だ。
山マンガの最高峰はやはり
「神々の山麓」である。
そこは譲れない。
それに比べると、
この「岳」というマンガは、
どうも軽い気がした。
特に、超人的な主人公「三歩」の存在が、
山というものの偉大さ、恐ろしさを
台無しにしている気がしていた。
どうして、この主人公だけが、
神様のような視点で特別な判断ができ、
超然として死と向かい合えるのか。
その点がキャラクターとして疑問だった。
けれども、
面白くわかりやすい山作品は少ないので売れている、
そういった評価を今まで持っていた。
しかし、本作の最終章は素晴らしかった。
視線をあえて三歩にせずに
一般人にしたことで、
エベレストの過酷さが十分に伝わり、
もっともスリリングなクライミングを描くことに成功している。
そして何よりも白眉はこのクライマックスだろう。
賛否両論もうなづけるが、
それでもこれが「山」なのだ。
そして、それでも人は「山」に登り、
クライマーは続いていく。
個人的には大変良い結末だった。
ただ、キャラクターに愛着を持つ人は、
読まないほうが良いかもしれない。