(2012年評)
石坂啓は、これだけ面白いマンガが作れるのに、
どうしてマンガ家を廃業しているのだろうか。
そんな無念を感じずにはいられない。
本作は、女性から見た恋愛、SEX、結婚といった
大きな問題に対して正面から闘っている大傑作だ。
主人公「まあこ」は4姉妹の三女。
しかし、ただの姉妹ではない。
母親は生涯に三度結婚して、父親は全員別の人。
それでも、姉妹の誰もその事を深刻にはとらえず、
むしろ楽しく日々を過ごしている。
まあこ自身は、恋愛は楽しければ良いといったスタンスで、
どんな相手でも気兼ねなく付き合い、気兼ねなく寝る。
そんな中で一人の同級生と、少しだけ真面目に
一緒にいることを考え始めるのだが、
どうしても心の片隅にいつもいるのは、
父親の可能性がある「ロクさん」。
そして、、、
本作のラストは見事である。
「アイ’ムホーム 」 のラストの時にも感じたことだが、
自分の描きたいテーマを譲らずに描けるマンガ家は稀である。
残念ながら並のマンガ家は、
所詮読者の事を考えずに作品は作れない。
しかし、石坂作品は違う。
真実を、物語の厳しい奥底を描かずにはいられない、
といった創作系の人間の業を感じる。
およそ石坂啓の廃業を
勿体無いと思うのはこの点につきる。
また、女性と「SEX」のテーマに関する
描写の深さも抜群である。
これはもう文化的に仕方が無い部分なのかもしれないが、
残念ながら「SEX」を描かせると男性マンガ家は、
女性マンガ家の足元にも及ばない。
多分「SEX」というテーマに対して、
人生で考えている時間が違うのだろう。
男性と女性とでは。
昨今の石坂啓の評判はネットで見る限りよろしくないようだが、
マンガ家はそんなもので評価される存在ではない。
作品こそが評価される軸なのだ。