(2012年評)
この作品は評価が大変難しい。
私の好きなレビューブログにおいても、
面白いのではなく上手いのではないか、
といった表現がされていた。
私も同様の感想を持っている。
庭をテーマにしたオムニバス形式の作品だが、
当然ながらその地味なテーマは、
起承転結と結びつきにくい。
しかし、作者「田中相」は、
その事をまったく恐れていない様子だ。
物語の中に起伏をつけずらいという事は、
今までの感覚でいけば大変な難題のはずなのだが、
そういった要素を考慮せずに物語は進んでいく。
ただ、ひたすら丁寧に、
日常の何気ない空間を切り取ることを目的として
本作は進んでいく。
そこに、面白さという軸は求められていない。
それ故、本作が詩的である、と表現されるのだろう。
個人的には盲目の王と、
その庭師の関係を描いた「ファトマの第四庭園」が一番面白かった。
裏を返せば、本作の中ではその作品が一番普通なのだ。
定石に沿ったマンガといえる。
2010年代における新しいマンガなのだろう。
私にはまだ追いつけていない。