「松本大洋」作品の評価は相変わらず難しい。
映画化もされたので、知名度は当然に高まったのだが、
連載当初から注目されていたかというと、
ファンの方を覗いては、さほどでもなかった。
要因の一つが、連載に向かないその作風である。
特に、哲学や抽象的な要素が入れば入るほど、
連載で読むのが難しくなる。
本作はその代表的な存在で、
下層の街「宝町」という架空の世界で暮らす
「シロ」と「クロ」という孤児の視点を通して展開され、
最後まで、物語は抽象化と具現化を
行ったり来たりする。
その辺りのストーリーへの評価は難しいが、
コマ一つ一つのカットが非常に魅力的であり、
物語以上に「宝町」自体の存在感が、
もう一つの主人公である事に気が付かされる。
松本作品を未読であれば、
「竹光侍」や「ピンポン」あたりに入られてから、
読む事をオススメしたい作品である。
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