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宗教と親友 ~ サトコとナダ

評価:3.68 / 5点



2018年に最終巻を読んで記事にしようと思ってから随分と時間が経過してしまったが、改めて読み返して、やはり素晴らしい作品だった。

『サトコとナダ』という作品は、タイトルの通り、日本人女子大生の「サトコ」とサウジアラビア出身の女子大生「ナダ」の二人が主人公の物語だ。



『サトコとナダ』の主人公2人

異文化交流する二人の主人公(1巻より引用)


そして、ナダとルームメイトになる事をきっかけに始まった二人の異文化交流と留学生活をサトコ目線で描いた作品なわけだが、これが物凄く面白いのだ。

まずは物語全体の雰囲気がとても心地よい。

あとがきで語られているが、もともとは作者「ユペチカ」が趣味で描いていた作品を編集者が発掘して作品化したパターンなので、変に漫画界の流行に媚びていない。

近年だと女性同士のルームメイトの関係性はどうしても緊密な描写が描かれがちだし、そういった需要が読者側にあるのも事実だが、本来は大人の人間同士のコミュニケーションはこのくらいの距離感が適切だろう。

だからといって二人の間に愛情や友情やスキンシップがないわけではない。その点も丁寧に押さえつつ、行き過ぎない——この“さじ加減”がとても良い。


また当時の漫画において本作はムスリムに関する知見が群を抜いていた記憶があるが、それ以上にこの作品は宗教を語りながら「押しつけがましくない」。

例えば誕生日を日本のように祝わないといった文化の違いを、女子二人のやりとりの中に自然に落とし込み、極めてスマートにエンターテインメントとして伝えてくれるのだ。



監修の「西森マリー」も最終巻あとがきで、説教臭くならずにイスラム教の文化を伝えることができたのは、このフォーマットのおかげだったと語っている。

サトコとナダで語られるイスラム教文化

さりげなく考えさせられる1コマ(1巻より引用)

 

ここが本作の肝だと思う。学問的なウンチクを読ませるのではなく「説明」よりも「物語」にして見せることで自然と知識も読者の中に入ってしまうのだ。

ただ、そんな風に書くと何やら学問的な漫画に思えてしまうが、まったくそんな事はない。


全4冊を通して本作で描かれている最も素晴らしい点は「学生時代における友人とのルームシェア」という人生の貴重な時間の楽しさなのだ。

留学生同士、そして異国をルーツに持つ二人の物語のラストは、ある意味で初めから輪郭が定まっている物語ともいえる。

そんな寂しさを徐々に感じさせながら物語は全4冊で綺麗に完結するのだ。

本作以降の作者「ユペチカ」の連載は今のところ発表されていないが、次回作を楽しみに待ちたいところである。

異文化理解の導入としても、日常劇としても楽しめる価値ある一冊だろう。



読後メモ:異文化友情と日常

  • 好き:押しつけずに文化を伝える語り口と、心地よい距離感の友情描写
  • 弱点:劇的な起伏や濃密な関係性を期待するとあっさりめに感じる
  • おすすめ:異文化理解の入門書を探す人、穏やかな日常劇が好きな人に
  • 評価:3.68 / 5

レビュー執筆:mangadake(当ブログ管理人)

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